スー女な音楽ライター・和田靜香さん
スー女な音楽ライター・和田靜香さん
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 そしてこの日の一番の収穫は、その名も一山本(いちやまもと)! 相撲界の序列、幕内~十両~幕下のも一つ下、三段目で頑張る彼は強い、強い。全身からファイト魂を放ち、男も女も吸い寄せる。

 私の前に座っていた相撲ツウのおじさんが「オレが一番だってことで、山本の前に一を付けたんだろうね!」と嬉しそうにのたまうから、いいこと言うわ!と頷いちゃう。ツウおじさんの話にさらに耳を澄ませば「役所に就職したけど、奮起して相撲界に入ってきた」んだそうで、23歳、北海道出身。今後は私が見守ることにします、はい。

 それにしてもおじさん、詳しいですね? 聞けば1年6場所、何度も見に来るとか。しかも「今朝も7時半には来たよ!」と朝イチから観戦と半端ない。疲れませんか?と聞いたら、「疲れないよ。だって相撲が大好きだから」というおじさん。瞳はキラキラ、少年のよう。お手製の星取表と力士名鑑をファイリングして大事そうに抱え、その相撲ファンな人生にビバ!

「藤井聡太四段よ!」

 そうこうするうち、フェスの1日は瞬く間に過ぎる。途中、お土産屋さんで可愛い相撲グッズを買い漁り、お団子やらも買い込んで席でモグモグ、ビールもゴクリ。フェスの醍醐味って、お買い物やら飲食にもあるよねぇ~と、一人ニマニマする。

 と、何やら向正面が騒がしい。キョロキョロしていると、嗅覚鋭い名古屋スー女たちが「藤井聡太四段よ!」と叫ぶ。おおっ! 話題の人は話題の場所にやって来る。大相撲名古屋場所、イケてるわぁと再確認した。

 さて、もちろん、横綱、大関陣ら、お馴染み関取たちも堪能。私も少しツウぶると、今、相撲界は20歳前後の若い力が台頭してきて、ワクワクする取組が目白押し。

 この日も20歳の貴景勝(たかけいしょう)が横綱白鵬に挑戦。がっぷり組むと負けちゃうからと手だけで突いてくる貴景勝に、白鵬、途中で動きを止め、さぁ飛び込んでこい!とばかりに両手を広げ、突っ込んできた貴景勝のまわしを取ってガシガシっと押し出した。

 これぞ、横綱の強さ、大きさ、かっこいい! 前のほうに座ってた男の子が“1番!”と指を高々掲げて「わあああ」と叫び、私も興奮して泣きそうになった。

 さぁて、大相撲名古屋フェス。23日まで続く。しかもTVでもネットでも楽しめる。

 エビバディ、チェキラ~ウト!


和田靜香(わだ・しずか)◎音楽ライター/スー女コラムニスト。作詞家の湯川れい子のアシスタントを経てフリーの音楽ライターに。趣味の大相撲観戦やアルバイト迷走人生などに関するエッセイも多い。主な著書に『ワガママな病人VSつかえない医者』(文春文庫)、『おでんの汁にウツを沈めて〜44歳恐る恐るコンビニ店員デビュー』(幻冬舎文庫)、『東京ロック・バー物語』『スー女のみかた』(シンコーミュージック・エンタテインメント)がある。ちなみに四股名は「和田翔龍(わだしょうりゅう)」。尊敬する“相撲の親方”である、元関脇・若翔洋さんから一文字もらった。