大泉洋『大泉エッセイ〜僕が綴った16年』(メディアファクトリー)※書影をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします
すべての写真を見る

 実際に、ドラマだけでなく、バラエティー番組にも出演している芸能人の本は、大ヒット作となったものが多数ある。

「星野さんと同様、『LIFE!』に出演しているムロツヨシさんの初の著書『ムロ本、』(ワニブックス)が今年の3月末に発売されましたが、発売初日に重版が決まりました。

 また、『水曜どうでしょう』(北海道テレビ放送)に出演している大泉洋さんの『大泉エッセイ~僕が綴った16年』(メディアファクトリー)も、累計発行部数40万部を突破しています」(前出・スポーツ紙記者)

書店員がオススメする芸能人本

 実際に、書店を巡ってみると、現場の書店員からはさまざまなオススメ芸能人の名前があがった。

伊集院光さんはすごく共感できますし、人生経験の豊富さを感じます。幼少期の家族との何げない会話なども入っているので、どの世代の人が読んでも楽しめると思いますよ」(書店員Aさん)

「朝日新聞での連載をまとめた、大竹しのぶさんのエッセイは芸能人の方のお名前がたくさん出てくるので、なんとなく状況を把握しやすいですね。(明石家)さんまさんのことは、“元夫”って書かれてますよ(笑)」(書店員Bさん)

「小林聡美さんと片桐はいりさん。映画でも共演していて、個性的な女優さんたちですよね。小林さんは主婦としての目線で、さっぱりとしたお話が多く、読みやすいんです。片桐さんは、旅行記が印象的。目のつけどころが違いますし、文才を感じますね」(書店員Cさん)

 名前を挙げられたのは、それぞれ親しみやすく、独自の世界観を持った人たちだ。本誌でも書評を担当するガンガーラ田津美さんは、このような売れる芸能人エッセイについて“本”だからこその楽しみ方もあるのだと語る。

ムロツヨシの『ムロ本』(ワニブックス)※書影をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします

エッセイを読み進めていくと、自分だけに語りかけてくれているような感覚を得られますよね。そんな中で、一般のリアルな付き合いだと話せないような、誰にも共感してもらえないことについて、ズバッと書いてあることがあるんです。“そう、それなんだよ!”と、ふだんの生活では語れないことについて共感することこそ、エッセイの醍醐味だと思うんです」

 本の著者=華やかな世界で生きる芸能人が、私たちと同じようにコンプレックスに悩み、人前で声を大にして言えないようなことを書いていたりするほど、共感は大きくなるのだ。

「文章力や、物語的なおもしろさ、ファンタジー感は必要じゃないと思うんです。例えば、叶姉妹のようなスーパーセレブのエッセイを読んで、“自家用ジェットで移動して~”なんて書いてあっても、共感はできませんよね。日常生活で実際に起こったことを“フムフム”“なるほど”って言えるものが、おもしろいエッセイだと思います」(ガンガーラさん)

 ヒットした芸能人エッセイには読者が思わず「それな!」と言いたくなる“日常感”があったのだ。