一見するとヘンでも未来のノーベル賞!?

「プロ野球選手と結婚する方法」、「かぐや姫のおじいさんは何歳なのか」、「縄文時代の栗のサイズ」。これ一体、何だと思いますか。飲み屋で話すネタ? クイズ番組の出題? 違います。これはすべて論文のテーマなのです。お笑い芸人であり、大学の講師も務めるサンキュータツオさんの『もっとヘンな論文』には、「そんなことが研究対象になるのか!」と驚くような論文が集められています。タツオさん、どうして変な論文を集めているのですか?

「こんなことをやっている人がいて、こんな世界があったんだという“知る喜び”ですかね。“ちょっとそこは想像してなかったわあ~”、“そこが議論されてるのか!” と知るのが好きですね。今、人工知能が活況を呈してきていますけど、10年以上前、ボナンザが将棋のAIを開発しているときは変な論文扱いでした。こんなことやって何の意味があるんだって言われていたんですよ。例えばAmazonとか楽天とかのネットショップで商品を購入すると、こういうのも好きですかっておすすめしてくるじゃないですか。ああいうのも指向性とか属性とかいうのを人工知能が覚えて、もしかしたら、この人こういうのが好きかもとか、ビッグデータを利用して学習して提案までしてくる。それも人工知能の研究があってのことなんです。一見、変な論文なんだけど、将来的にはこういうところに役立つかも……っていうところまで感じてもらえたらなと思います」

「プロ野球選手と結婚する方法」とか「カブトムシの起き上がりの観察」なども将来的には役立つと思うとワクワクしますが……。

「カブトムシがどうやって起き上がるかは、10年ぐらいかけてやってる人がいるんですよ。環境が行動をどうやって制限しているかという心理学の研究です。“カブトムシの心理なんてねえよ!” って思うはずなんですけど、1歩も2歩も先行ってる人ってワケわかんないじゃないですか。われわれが理解できるのって半歩先ぐらいまで。2歩先行ってる人の1歩半ぐらいをこっちに寄せる作業がこの本でやってることかなって思います。それに今、光が当たってなくても、いつ光が当たるようになるかわからないというのが研究の世界の常なので、今、光が当たっていない研究者の方たちにも報われてほしいなと」