奈良県でC型肝炎治療「ハーボニー配合錠」の偽造医品が発見されたのは、今年1月のこと。その後、京都、東京、大阪でも見つかり、その数は15点に。本件による健康被害は出なかったが、過去には偽造医品による健康被害が起こっているのだ。私たちはどのように、偽造医品から身を守ればいいのだろうか。

「わが国の正規流通経路では、偽造医品が紛れ込むことはほとんどなく、医療機関や局で偽装品が患者さんの手に渡る事件は、極めてまれです。過去にもほとんど例が見られないケースですね」

 そう語るのは、国内外の偽造医品蔓延の状況と、その対策に関する研究を行っている、金沢大学医保健研究域学系国際保健学研究室の坪井宏仁准教授だ。

 偽造医品とは、

(1)有効成分も有害成分も含まれていないもの

(2)未知の成分が含まれているもの

(3)表示とは異なる医品が入っているもの

 の3つに大別される。(1)のケースでは有効性が得られないかわりに健康被害も現れにくいが、治療の機会喪失による健康状態の悪化(死亡例もあり)などを招きかねない。一方、(2)や(3)の場合は、重篤な健康被害に結びつく危険性がある。

 今回のハーボニーの件では(3)に分類される偽造品が出回った。なぜ、偽造医品が流通してしまったのだろうか。

 その原因について「局がハーボニーの仕入れに非正規流通経路を利用したことにある」と坪井氏は指摘する。

 通常、わが国の医品は製会社から医品卸業者を通して局や病院へ。あるいは、製会社から直接医療機関へ卸され、患者の手に渡る流通ルートをたどる。

 だが、これとは別に、製会社以外から安く医品を仕入れ、卸す“非正規流通経路”があるとされる。今回、偽造医品が紛れ込んだルートでは、法令上定められている医品を持ち込んだ者の氏名、医品名、数量などの記入は行われていたが、身分の確認は実施されていなかった。

 後の調べで、偽造医品を持ち込んだ者の氏名は偽名だったことが判明。今回の件は、流通経路における医品取引の仕組みの隙をつかれたと考えられている。