古舘プロジェクト所属の鮫肌文殊、山名宏和、樋口卓治という3人の現役バリバリの放送作家が、日々の仕事の中で見聞きした今旬なタレントから裏方まで、テレビ業界の偉人、怪人、変人の皆さんを毎回1人ピックアップ。勝手に称えまくって表彰していきます。第29回は山名宏和が担当します。

勝俣州和 様

 今回、勝手に表彰させて頂くのは、勝俣州和さんである。

 勝俣さんは、芸能界でも不思議な存在である。芸人でもないし、俳優でもない。まさにザ・テレビタレントである。

勝俣州和

 そんな勝俣さんに世間の人はどんなイメージを抱いているのだろうか。

「いろいろな大物タレントと親しい」

「いつも半ズボン」

「とにかく元気、時々うるさい」

 こんなところが主なイメージではないだろうか。

 一方、番組制作者にとって勝俣さんは「とても助かる出演者」であり、口の悪い言い方をすれば「使い勝手のいい芸能人」である。

 僕も構成に参加している『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)にも、勝俣さんは頻繁に出演している。以前、ゲストの出演回数を調べたら、勝俣さんがダントツの1位だった。もはやセミレギュラーである。

 なぜこんなにもテレビ番組は勝俣さんを起用するのか。彼のいったいどこがスゴいのか。『DX』のディレクター陣に聞いてみた。

「企画主旨をちゃんと把握してくれる」

 複数のディレクターから同じ答えが返ってきた。

『DX』の場合、取材も兼ねて打ち合わせをするのだが、事前に収録内容を送っておくと、それにふさわしいネタを用意してくれているという。取材前にこうした準備をしておいてくれる芸能人は意外と少ない。さらに勝俣さんの場合、同じ回のゲスト一覧を渡しておくと、その人たちがらみのネタも考えておいてくれるそうだ。

 勝俣さんが特番や新番組の初回ゲストとしてよく名前が挙がるのは、この「企画主旨の把握力」にある。初めてやる番組の場合、司会者も手探りだ。時には、ゲストの話は意図せぬ方向に話が転がってしまうこともある。そんなとき、勝俣さんは軌道修正の手助けをしてくれる。それができるのは企画内容をちゃんと理解し、スタッフが思い描く理想形をわかっていてくれているからである。

 実際、『DX』の収録でも、勝俣さんのナイスアシストはしばしば見られる。たとえば、バラエティー番組の出演経験が少ない若手俳優やスポーツ選手が出演したとき、トーク中に妙な間が空いてしまうことがある。そういうとき、勝俣さんはすかさず入ってきて、場の空気が冷めないようにしてくれる。これはとてもありがたい。