子どもの反抗で継母がうつに

 しかし、ステップファミリーが抱える問題もある。映画では、再婚同士の夫婦に新しい命が宿ったのを知った多感な娘が継父に「やっぱりこのウチ、嫌だ。本当のパパに会わせてよ」と叫ぶ……。映画の中ではあるが、同じ経験をしたという再婚夫婦は少なくない。

 シングルマザーも恋愛をし、再婚しやすくなってはいるが、子どもの気持ちが複雑なのは、今も昔も変わらない。

 こんな実例がある。

 夫の連れ子が、継母の財布からお金を盗む。それで継母は強く叱り、さらに夫に報告するが、「そんな子どもではなかった、お前の教育が悪いんだろう」と逆に非難をされてしまい、「もう死にたい」と口走り、うつ状態に。これでは何のために再婚したのか。

「ここには3つの問題があります。まずお金を盗む行為の裏にある子どもの気持ちを見抜けなかったこと。時間はかかっても子どもは必ず心の安定を取り戻します。あわてずに4年くらいかけて見守ってほしいですね」

 反抗する子どもを目の前にして、4年は長すぎる気がしないでもない。ステップファミリーは、違った経験や習慣を持った大人と子どもが、新しい家族として自分たちの歴史を作っていく時間と考えれば納得だ。

「2つ目は、夫婦のコミュニケーションがちゃんととれていたかです。日本には“口で言わなくてもわかるだろう”文化がありますが、ステップファミリーは細かく話し合いをしないとうまくいきません

 アメリカではステップファミリーとして結婚するのに、コミュニケーション・プログラムを受けるという。

「3つ目は、周囲の理解です。この継母の場合は、自分の状況を話し、相談できる場所がありませんでしたね」

 子連れ再婚をした者に対して周囲の目は意外に厳しく、不満や愚痴を吐き出そうものなら「それくらいわかって結婚したんでしょう」と返されてしまう。他人の親になるために頑張っているのに世間は認めてくれず、自己評価が下がり、ストレスを抱え込む。

「私の主宰するM-STEPは、ひとり親家庭の恋愛と再婚を支援しています。SNSなどでも仲間探しはできるので、ひとりで悩まないことが大切です」