大人ばかりの酒場に紛れ込んだ19歳の少女が隅にちょこんと座っている。少し猫背、あどけない瞳で、大人たちの話を聞いている。うなずくでもなく、はしゃぐでもなく、まるで違う生き物でも見るように彼女は存在していた。

 隣のリリーさんがちょっぴり下ネタを言うと、まるで外国人が通訳に意味を聞くように姉のほうを見る。その時のポカンとした表情が、下ネタをマイルドにする。

 子供の頃、眠いながらも大人たちの酒盛りにいた時を思い出す。

 苦い泡のお酒、茶色いお酒、あんなものが何故うまいのか? と思ったり、真面目な親戚より、自由気ままなおじさんの話のほうが面白かったりとか、昭和の時代の飲み会がよみがえる。

 クリエイティブな話をしろ、と言われてもなかなか話しにくいものだ。自慢話に聞こえるし、手の内を明かすことになるからだ。しかし、クリエイターたちは親戚のおじさんと化し、彼女にわかるように優しく話す。 口数も多くなりネタの撮れ高もバッチリ。普段聞けない貴重な話が聞けた。

 ママの蒼井優ちゃんがものすごくいいタイミングで、『海街diary』で、すずが桜の木の下を自転車で走っていると、桜の花びらが一枚おでこに付いて、カメラが寄ると、花びらがどこかに飛んでいく、というとても情緒のある話をした。みんなそのシーンを思い浮かべながら酒を飲む。

 最後に、今宵の話を歌にしようということになり曲作りが始まる。その歌のモチーフは広瀬すず

 秋元さんを中心に作詞が始まり、福山さんがそれに曲をつけ、いよいよ歌のお披露目。

 曲のタイトルは『おさがりの制服』

 演奏に広瀬すずも参加。彼女の手にはしっかりと鈴が握られていた。


<プロフィール>
樋口卓治(ひぐち・たくじ)
古舘プロジェクト所属。『中居正広の金曜のスマイルたちへ』『ぴったんこカン・カン』『Qさま!!』『ぶっちゃけ寺』『池上彰のニュースそうだったのか!!』などのバラエティー番組を手がける。また小説『ボクの妻と結婚してください。』を上梓し、2016年に織田裕二主演で映画化された。最新刊は『ファミリーラブストーリー』(講談社文庫)。