青年曰(いわ)く、「この店ほどラーメンのことを考えている店はない」とのこと。このあたりも日本人らしさが出ていると思います。ギリシャ人であれば、けんかして辞めた店に戻るなんてことはそうそうありません。自分の非を認め、また教えを乞う。なんとも美しい姿に思えました。

 その後、友人と福岡で、博多ラーメンと久留米ラーメンを食べる機会がありましたが、とてもおいしく、飲んだ後のラーメンの魅力が少しだけわかった気がしました(ちなみに、ギリシャでは、飲んだ後は、サンドイッチや甘くないクレープ、パチャスと呼ばれるスープで締めます)。

 最近はたくさんお酒を飲んだときに、日本のみそ汁を飲むことがありますが、翌朝だいぶ違います。

電車の中で寝ちゃうなんて!

 余談ですが、以前、初めて日本を訪れたギリシャ人と一緒に、東京の地下鉄に乗ったことがあります。彼が驚いたのは、電車で酔って寝ている人を見かけたことです。アテネでメトロというと、治安的に少し危ないイメージがあります。でも、日本の電車では寝ている人がいる。そのくらい安全だということにまず驚いていました。

 もう一つ驚いていたのは、酔っ払って寝ている人でも、降りる駅に着いたら、アナウンスとともにちゃんと起きることでした。これは驚きと面白さと両方でした。もちろん寝たまま終点まで行ってしまう人もいるのでしょうが、これを目の当たりにしたときは、驚き、そして笑ってしまいました。

 口を大きく開け、座席の端にある手すりにもたれかかっていて、いかにも「酔っ払っている」というふうに見えても、自分をコントロールしている人もいるんだなあと感心しました。

 最近はヨーロッパにも日本酒が広まり、人気が出てきているようです。日本酒ソムリエという資格もあると聞いてちょっと興味をそそられます。ギリシャでは比較的裕福な人たちの間で日本食や日本酒が注目されていますが、今後、少しずつギリシャでも知られる機会が増えるかもしれません。


アナスタシア・新井・カチャントニ◎通訳、翻訳家、ライター ギリシャ生まれ。ギリシャの大学の専攻は物理だったが日本に興味を持ち、現在は通訳、翻訳家、コーディネーター、ライターとして活動。日本のポップカルチャーから伝統文化、料理まで、幅広い分野を研究。また、ギリシャで剣道を教える日本人の夫を手伝う傍ら、自らもギリシャ人に日本語を教え、日本の文化を伝えるべく奮闘中。現在はアテネ近郊に在住。ブログはこちら