不安商法と一緒

 前出の大谷氏は、安倍政権の北朝鮮関連の対応策について厳しい目を向ける。

「必要以上に国民の不安を煽り、与党と野党とどちらが危機対応で安定していると思うか、と迫っているようなもの。そもそも、Jアラート(全国瞬時警報システム)の運用にしても、全国各地でわけのわからない避難訓練が行われていることにしても過剰反応ではないか。

 子どもが頭を抱えて床にしゃがみこむ姿がテレビで映し出されましたが、あれでミサイルを防げますか。むしろ北朝鮮を調子づかせるだけです」(大谷氏)

 しかし、不安をかき立てるアクションは止まらない。

 安倍首相は日本時間21日未明、米ニューヨークで開かれた国連総会の演説で北朝鮮を非難し、

「必要なのは対話ではない。圧力なのです」

 と言い切った。

 核実験や弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮が“ならず者国家”であることはよくわかっている。ただ、米朝関係が緊迫化する中、火に油を注ぐことになりかねない。

「安倍政権がやっているのは“不安商法”です。老後の不安を煽ってお年寄りに怪しい投資話を持ちかけるのと同じ。最も悪質な商法でブラック企業と何ら変わりません。ブラック企業が利益しか考えていないように、安倍首相は党利党略しか考えていません」

 と大谷氏は指摘する。

 選挙戦では、憲法改正にも踏み込みそうだから怖い。

「北朝鮮の脅威を強調して国民を追い込もうとしています。陸・海・空軍を持たない国でいいのか、あるいは自衛隊の根拠規定が明記されていない憲法でいいのか、などと不安を煽り、国民から“このままではまずい”という声を引き出そうとしているのではないか」(大谷氏)

 前出の有馬氏も「自民党の選挙公約の“売り”は消費増税の使い道ではない」として次のように話す。

「北朝鮮はこの先、脅威を増すとし、しっかり対応するため自民党に準備を任せてほしいと訴えるはず。憲法を変えることで北朝鮮に圧力をかけると言うかもしれない。安倍首相はずっと憲法改正がやりたいわけですから」(有馬氏)

 解散カードを切れるようになった背景には、内閣支持率がやや回復したことがある。

 前出の大谷氏は言う。

「報道各社の世論調査によると、8月3日の内閣改造直後はさすがに支持率が上昇した。一部調査ではようやく支持率が不支持率を上回ったが、僅差で1ポイント程度しか違わなかった。それだけ森友・加計学園疑惑に対する国民の不信が根強いことを示したわけで、それは現在も払拭されていない。野党は選挙戦で“疑惑隠し”を言い続けないといけません」