作らなくても楽しい不思議な料理本

“ヒラメのホワイトソースがけ”(フランス・ブルボン王朝)
“ヒラメのホワイトソースがけ”(フランス・ブルボン王朝)
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 本著は大きく時代と場所で8章に分かれ、それぞれ主食となるもの、主菜、副菜のスープやサラダ、デザートなどのレシピが、バランスよく掲載されています。ふんだんな写真と、詳しい作り方。そして章末には時代背景と料理の補足があり、情報の充実度と読みやすさに、ページをめくる手が止まりません。

「料理を作って美味しいのはもちろんですが、作らなくても読んで楽しい本にしたつもりです。章を追うごとに時代は現代に近づいていくので、徐々にレシピが洗練されていく過程も、面白がってもらえたら光栄です」

 料理のプロではない、歴史も専門家ではないと言い切る遠藤さんですが、料理にも歴史にも興味がなくても、じゅうぶん楽しめる作りの本著は、本当に魅力的です。

「自分で書いておいてなんですが、不思議な本ですよね。本屋では料理本コーナーに置いてあったり、歴史コーナーで今はやりの『応仁の乱』の本の隣にあったりします(笑)」

 予想外だったのは、人気ゲーム『Fate/Grand Order』のファンたちがこぞって買い求め、部数を押し上げてくれたこと。

歴史上の偉人や神話の登場人物たちとともに、主人公が戦い世界を救う物語らしく、その歴史上の偉人が食べていたであろう料理を『歴メシ!』で再現できるのが、とてもウケたそうです。驚きましたが、素直にうれしかったですね」

 今後の目標は、外国でも『音食紀行』を行うこと。またイベントの様子のコミカライズ、そして、もちろん『歴メシ!』の第2弾発行も目指しているそう。やりたいことのアイデアは、どんどん湧いてきます。

「これからもたくさんの研究をしつつ、エンターテイメントとして気軽に楽しめる料理を提供していきたいです。レシピはどんどん自己流にアレンジしてもらってもいいと思っているので、家庭でもお気軽にお試しください」

『歴メシ!』片手に、今日の夕食を古代ギリシャ風か古代ローマ風かで悩むのも、きっと楽しいですよ!

取材・文/中尾巴

『歴メシ! 世界の歴史料理をおいしく食べる』 遠藤雅司=著 1700円+税 柏書房 ※記事の中で画像をクリックするとamazonの紹介ページに移動します

<プロフィール>
えんどう・まさし 1980年生まれ。歴史料理研究家。国際基督教大学教養学部人文科学科音楽専攻卒業。卒業論文は『J.ダウランドの音楽と生涯』。2013年より世界各国の歴史料理を再現するプロジェクト『音食紀行』を開催。趣味はクラシックギター、バロックギター、リュート、チェンバロの演奏。本著が初の著作となる。
【音食紀行HP】 http://onshokukiko.com/wpd1/