この論文は、カナダ・マックマスター大学のMahshid Dehghan博士らが報告したもので、5大陸18カ国で全死亡および心血管疾患への食事の影響を検証した大規模疫学前向きコホート研究(Prospective Urban Rural Epidemiology:PURE)の結果です。

 2003年1月1日時点で35~70歳の13万5335例を登録し、2013年3月31日まで中央値で7.4年間も追跡調査しています。

 これまでの研究データのほとんどが、栄養過剰の傾向にある欧米のものであったのに比べ、低所得、中所得、高所得の18カ国を網羅しており、その点でも信頼性の高い研究だといえます。

 論文の要旨は下記のとおりです。

(1)炭水化物摂取量の多さは全死亡リスク上昇と関連

(2)総脂質および脂質の種類別の摂取は全死亡リスクの低下と関連

(3)総脂質および脂質の種類は、心血管疾患(CVD)、心筋梗塞、CVD死と関連していない

(4)飽和脂肪酸は脳卒中と逆相関している

 つまり、炭水化物をとるほど死亡リスクが高くなる一方で、脂質の摂取量が多いほど死亡リスクは低下するということです。特に飽和脂肪酸の摂取量が多いほど脳卒中のリスクは低くなるということです。

 以上のことが確認されたことから、画期的な内容といえます。

「今回の結果を踏まえ、世界的な食事ガイドラインを再検討すべきである」と著者は提言しているのですが、当然と思います。

炭水化物6割以上は避けるべきである

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 この研究では、「炭水化物の摂取量が60.8%以上の群では、死亡率が上昇する」という結果が出ています。

 しかし、日本の医療現場などで指導されるカロリー制限食では、6割くらいの糖質量になってしまいます。これでは、糖尿病に限らず、生死にかかわる健康リスクが増大してしまいます。

 これまでの指導基準を改め、糖質量を控えた食事を指導するように変えていくべきでしょう。

 また、和食はどうしても糖質量が増えてしまいがちです。従来の日本人の食事では、糖質(炭水化物)がやはり6割くらいの割合になります。

 特に外食のランチで見られる「麺類+ご飯物」のような食べ方をしていれば、糖質量は6割をはるかに超えてしまいます。

 正しい糖質制限食の考えを取り入れた食事に改められることをお奨めします。