最大手メーカーも廃業した茨城県

 給食に出されるソフト麺が全国的に減る一方で、学校給食会の規格品に登録されている麺はソフト麺だけという地域もある。長野県茨城県だ。

 しかし茨城県では昨年、県内最大手のソフト麺製造業者『茨城ソフトメン』が廃業している。

「30年前、県内にソフト麺業者は15社ありました。しかし、今は9社のみです」

 と話すのは、笠間市の『笠間ソフトメン橋本屋』の石上渉社長。

「『茨城ソフトメン』の担当エリアだった水戸市、ひたちなか市、常陸太田市、大洗町などは、ソフト麺の空白地帯になりました。ただ、そこから聞こえてくるのは“どうしてもソフト麺が食べたい!”という児童さんたちの声。なんとかしてあげたい

 都合がつけられるときは、50キロ離れた大洗町の学校に、ソフト麺を納入しているというから驚きだ。

「ウチは笠間市をはじめ、城里町、茨城町、桜川市、石岡市などを担当しています。国の方針で週4日はご飯給食で、麺は週0.5回未満。そのため注文ゼロの日もありますし、逆に注文が重なって、配送直前に行う蒸気殺菌を3回転させるときもあります。遠方の学校にも余裕をもって届けるため8時には出発するので、そんな日は4時出社です」

 本当にシビアな経営者だったら学校給食のソフト麺事業の継続は迷うところでしょう、と石上社長。

「ソフト麺は、メニュー設計的には時代遅れかもしれません。昔と違って、学校給食用のうどんもスパゲティもありますから。もう役割を終えているのかもしれません。しかしソフト麺は、戦後、アメリカから輸入された小麦を使って、日本人が作り上げた努力の麺なのです」

 鯨の竜田揚げと同様に、戦後の食料事情を物語る存在なのだ。

「そんな歴史的な重さを持つ、意義ある食品ですから、やはり継承していきたい。そのためには、学校給食会や市町村との話し合いは不可欠だと思っています。国の米飯給食推進も理解できますが、パン屋さんや麺屋さんが継続可能な仕組み作りも必要ではないかと感じています」

『笠間ソフトメン橋本屋』の工場に潜入(1) 小麦粉はすべて茨城県産。「大手製粉メーカーで丁寧にひいてもらってます」
『笠間ソフトメン橋本屋』の工場に潜入(2) 一気にゆで上げた麺は、即冷水で締め、個装される。「品質は機械と従業員のダブルチェックです」
『笠間ソフトメン橋本屋』の工場に潜入(3) 40分かけて蒸気殺菌(90度)。ホカホカのソフト麺をのせた配送トラックは朝8時には出発