「SNS映え」も要素だろう。食べ応え、ワイルド感なども重視して、可能なかぎり分厚くカットして提供することにより、相撲=ボリュームたっぷりというイメージにも合致。写真を撮ってインスタグラムやFacebookに投稿したときのウケがいい。

ジューシーという言葉がぴったり。ワイルドにかぶりつけ!
ジューシーという言葉がぴったり。ワイルドにかぶりつけ!
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 最後は「高原価率」にある。10年前ならば飲食店の原価率は30%以内に抑えるという料理界の一般常識的な数字があったが、ドラゴの原価率は50%を超えるもようだ。それもほかの飲食店と比較して、調理がとても少なくて済むため人件費も抑制できる。

 その分、優れた食材に費用を充てられる。昨今の黒字飲食店のキーワードは「薄利多売」。原価率でいえば35~45%程度が売れている飲食店のスタンダードとなりつつある中で、これだけ高い原価率でメニューを提供できれば来店客の満足度は高い。

 とはいえ、経常利益が確保されなければ企業経営は成り立たない。そこで用いられる概念が、FLコストやFL比率というもの。FLコストが原価+人件費、それを売上高で割った数字がFL値だ。健全な飲食店経営のためには、このFL値を65%以内にすることが大切といわれ、ドラゴはそこを守っている。

当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

外食業界のトレンドは移ろいやすい

 セカンドキャリアとして、飲食店経営に乗り出す元プロスポーツ選手は少なくないものの、失敗するケースは枚挙にいとまがない。ここまで成功を収めている鎌苅氏だが、焼き肉のみならず外食業界のトレンドは移ろいやすい。これまでに作り上げた自らの強みを生かしつつ、時代の流れに対応して柔軟にそのやり方をつねに工夫していく努力が欠かせない。


はんつ遠藤(はんつえんどう)◎フードジャーナリスト 1966年生まれ東京在住。早稲田大学教育学部卒業。海外旅行雑誌のライターを経て、テレビや雑誌、書籍などでの飲食店紹介や、飲食店プロデュースなどを行うフードジャーナリストに。ライターとして執筆、カメラマンとして撮影の両方をひとりでこなし、取材軒数は8000軒を超える。「週刊大衆」「JAL(Web)」などに連載中。また近年は料理研究家としてTVラジオ雑 誌などで創作レシピを紹介している。著書は『はんつ遠藤のうどんマップ東京・神奈川・埼玉・千葉』(幹書房)、『おうちラーメンかんたんレシピ30』『おうち丼ぶりかんたんレシピ30』『全国ご当地やきとり紀行』など。