主治医の了解をとりながら進める

“主治医に言いづらい”“やり方がわからない”とセカンドオピニオンに二の足を踏む人は多い。そこで、正しい手順を示したのが●の図。まずは主治医に了解をとって紹介状を書いてもらう必要がある。その際、主治医を不快にさせない伝え方は?

「“私にとって大事な決断をしなければならないので、セカンドオピニオンを聞いてみたい”と正直に伝えればいいのです。今はセカンドオピニオンが普及しているので、医師も心得ていますよ。

 それにセカンドオピニオン先に患者の情報を提供することで、5000円の診療報酬がつくので、病院にとっても利益にはなるものですから。良識的な医師ならセカンドオピニオン紹介を拒否はしないと思います。

 ただし“この治療法がいちばんだから、ほかで診察しても無駄だと思うよ”という言われることはあるかもしれませんが……」

 次に、セカンドオピニオン先の病院を決める。

「この病院で相談したいという希望があれば主治医に申し出ましょう。特定の医師を指名することもできます」

 自分に知識や情報がない場合は、主治医に任せることに。

「医師の世界は出身大学による系列があるので、同じ系列の病院を紹介されるケースが多いですね。また、セカンドオピニオン先が主治医と同じ診療科だと治療方針が重なる可能性が高い。

 ですので、例えば、がんの場合、主治医が外科医なら、セカンドオピニオンは放射線科の医師に聞く、というふうに診療科を変えるケースはよくあります。いずれにしろ、主治医と話し合って決めることになります」

 病院が決まったら、そこに連絡して申し込み方法を確認し、主治医にカルテや検査データなど必要な資料と紹介状を用意してもらう。それを持ってセカンドオピニオンを受けることになる。

 ちなみにセカンドオピニオンは健康保険が適用されず、自費診療なので、やや高額。

「だいたい30分で2万〜3万円が平均。あくまでも治療について意見を求める場ですから、診療や検査は行われません。相談時間は限られているので、事前に“伝えること”“聞くべきこと”を整理しておきましょう。こういう診断で、主治医にはこういう治療法を提案されている、など。

 そして、なぜセカンドオピニオンを受けにきたのかを伝えることが大事。“この病院の治療法に興味がある。複数の選択肢から治療法を検討したい”といった受診の目的を話しましょう」

 セカンドオピニオンをどう生かすかは患者次第だ。

「手順としては、セカンドオピニオンの結果を主治医にフィードバックします。病院によっては、セカンド医師から主治医あてに文書で報告してくれます。その結果を見て、患者は主治医と一緒に治療法を再検討します」

 主治医とセカンド医師の治療方針が異なる場合は、どうすればいいのか?

「患者が、どっちがいいかを判断するのは難しいケースが多い。ここはプロに任せ、主治医にセカンド医師と話し合ってもらい治療法を決めてもらいます。ただ、大きく見解が異なることはそれほど多くはありません」

 でも患者が主治医よりもセカンド医師の治療法をどうしても選択したいと思ったら、主張してもいいのだろうか?

「それは患者の自由なのでOKです。ただし主導権は主治医にあり、やはり主治医に了承を得なければなりません。

 例えば、乳がんで、自分としては乳房を切りたくないが、主治医は摘出をすすめた場合。“セカンド医師が放射線治療で温存できると言っているので、そちらを選択したい”と意向を伝えます。主治医が了承すればセカンド医師は受け入れてくれますから、転院の手続きをとります

 実際には、セカンドオピニオンと主治医の見解がほぼ同じというケースが多い。それでも時間とお金を費やす以上の意義がある、と植田さん。

「例えば主治医に“手術をすすめる”と言われて“いやだ、やりたくない”と思っても、セカンド医師にも同じ治療法をすすめられると“やはりそれが最善の方法なのだろう”と納得できるんです。実はこれが大事。

 納得しないまま治療や手術を受けると“あのとき手術しなければよかった”と、のちのち悔やんだりすることが。納得したうえで治療を進めれば、その後も前向きに病気と闘っていけるんです。それがいちばんのセカンドオピニオンの利用価値だと思いますね」

 もちろん最初から主治医の治療方針に納得できれば、セカンドオピニオンは必要ない。

「少しでも釈然としないものを感じたら、セカンドオピニオンを大いに利用しましょう」