世界的に絶滅の危機が増大している

 しかし、こうしたカワウソペット人気を危ぶむ声が高まっている。

 カワウソは世界に現存する13種(一説では12種)のうち、その大半が絶滅の危機に近づいているという事実があるからだ。中でも水族館などで数多く飼育されたり、ペットとなっている東南アジア原産のコツメカワウソは、国際自然保護連合(IUCN)が作成するレッドリストで「絶滅危惧II類」(絶滅の危機が増大している種)に分類されている。ワシントン条約では附属書IIに分類され、商用目的の取引は可能だが、輸出には政府発行の許可証が必要となる。

 8月に長崎・対馬でカワウソが撮影され、絶滅したはずのニホンカワウソかとニュースになったことで、カワウソの絶滅について知った人も多いはずだ。

 さらに、ペット人気の高まりの裏で深刻な問題が起きている。東南アジアからの日本へ密輸が後をたたないのだ。記者が調べた限りでは、2017年は2月、6月、8月に、タイ・バンコクで日本人がカワウソを密輸しようとしたとして摘発されている。現在、日本国内ではペットのために繁殖されたカワウソが販売されているが、ペット人気が高まり需要と供給のバランスが崩れると、密輸や違法な捕獲を招いてしまうという。

日本国内に闇市場がある可能性が

 長年、国内外のカワウソ研究を行う筑紫女学園大学の佐々木浩教授に話を聞いた。

「今年に入って密輸が連続して摘発されていることを受け、私が参加しているカワウソの国際的な保護グループ(国際自然保護連合 種の保存委員会 カワウソ専門家グループ)では、日本のカワウソペットブームを非常に危惧しています。東南アジアでは、カワウソは漁業者に害獣扱いされており、あまり守ろうという機運がない。捕まえて売れるならラッキーという側面もあるんです。そのためか現地でカワウソを簡単に手に入れることができて、うまく日本に持って行けば100万円程度で売れる。

 ただ、そう簡単に売り先があるものではないので、日本国内に闇市場がある可能性があります。ちゃんと日本政府はチェックしているのか、環境省にも問い合わせましたが、基本的に販売は登録制ではないので、チェックシステムはないと。今後どのように対応したらいいのか考えねばなりません」(佐々木教授)

 また、ネットやテレビで「カワウソは簡単に飼える」という紹介のされ方をすることもあるが、佐々木教授は、「カワウソは基本的にはペットに向いていないというのが、多くの専門家の考え」と続ける。

カワウソは野生動物ですから、ペットとして飼う想定がされていません。動物園や水族館では繁殖技術、飼育技術のマニュアルがある程度確立されていますが、一般の方が飼うためのマニュアルは基本的にない。よほど経済的に豊かであれば、水族館のような立派なケージや水場を設置して飼育することはできるとは思いますが、それなりの知識と技術が必要です」

 コツメカワウソは群れで生活する種のため、一頭ではストレスを与えてしまううえ、マーキングしてコミュニケーションをはかるので強いニオイも気になる。加えて、カワウソから人間にうつる病気がないのかなど、カワウソについてはまだよくわかっていない部分も多いのだという。特に密輸の場合、野外から捕まえてくる可能性があるので感染症などの心配は大きいだろう。

やまとは器用にボールを持つこともできるが、芸として教えているわけではなく、トレーニングの一環だという 撮影/吉岡竜紀
やまとは器用にボールを持つこともできるが、芸として教えているわけではなく、トレーニングの一環だという 撮影/吉岡竜紀
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 サンシャイン水族館のカワウソ担当の飼育員・川部祐子さんはこう話す。

「遊び好きで手先が器用なので、かわいらしい仕草を見ていただきたいですが、それと同時に危険な動物だというのは知ってもらいたいと思いますね。かわいいだけじゃなくて獰猛(どうもう)な部分があるので、そう簡単に飼える動物ではないです」

 カワウソは仲間同士でケンカすると、相手の指を食いちぎるくらい顎の力が強い。実際、川部さんも噛まれて怪我をしたことがあるという。水族館や動物園では、毎日健康管理のためのトレーニングをして、少しずつ人に慣らしていく。普通のペット以上の忍耐力が必要なのだ。

「もしペットとして飼って、飼いきれなくなって自然に放されて繁殖してしまうと、害獣扱いされて殺されてしまう危険性もある。そうならないように、ペットとしては飼ってほしくないと思います」(川部さん)