報告書は《副担任の指導に対し、土下座しようとしたり、過呼吸を訴えたことなどは、本生徒の追い詰められた気持ちを示すものである》と、見逃した責任を指摘している。

弔問に行かなかった担任と副担任

A君が通っていたとみられる通学路
A君が通っていたとみられる通学路
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 亡くなるひと月ほど前、2度目の登校渋りがあって家庭訪問した担任に、祖母は「テレビで言っているようなこと(自殺など)にはならないようにしてほしい」などと伝え、担任は男子生徒に「命は大事なんだぞ、命はひとつなんだぞ」と、生徒が死ぬ恐れがあるかもしれないということを自覚する発言をしておきながら、受け止められなかった。

 副担任の行きすぎた指導法も校長と教頭に報告したが、問題はスルー。

 A君が亡くなった後、弔問に校長らは来たが、担任、副担任は来なかった。

「こちらが来てくださいといって、担任と副担任が来てくれました」

 A君の母親はつらい表情で答えたが、なぜ遺族から声をかけられないと動かないのか。池田町教育委員会は、

「事件以降、担任の先生は異動してしまいましたから」

 と明かし、堀口校長は、

「これは僕らの勝手な主観に基づく判断なんですけど、われわれを受け入れてもらうには時間がかかるんだな、行っても受け入れてもらえないだろうなと思惑が働いて。日にちが過ぎていって」

 と当時の状況を振り返った。校長がそもそも勝手な判断をする学校だからこそ、教員も勝手な判断に走ったのか。

 法政大学特任教授で教育評論家の尾木直樹氏は、

「生徒数が少ない学校は組織だった報告とか会議をかけなくても、教員は全校生徒の名前を覚えてるでしょ。でも、そういう恵まれた条件が安易な方向に行って、基本的なことをおろそかにしてしまったんじゃないかなという気はしますね。大規模校であれば、みんなで情報を共有しましょうとなるんですけどね」

 と、小規模の学校だからこその懸念があるという。また担任の怒声については、

「でかい声を出すってことは、自分の思いとかをぶつけるってことなんです。恐怖ですよ」

 と時代遅れの大声の叱咤激励にダメ出し。

「生徒指導で一番大事なのは生徒を理解する、生徒の話をよく聞くこと。しっかり受け止めて心の叫びをつかまえることができれば、生徒は先生に信頼を寄せ始めます」

 大声で怒鳴る、強く叱責するといった誤った教育が生徒を追い詰め、命を奪った。今回の“事件”を決して忘れず、2度と起きないようにしなければならない。