久瑠あさ美さん

 状況や環境が変わるとネガティブなほうに引っ張られやすいのが人間。「だからこそ、ふだんからポジティブなほうへ意識が向かう習慣づけが必要」というのは、メンタルトレーナーの久瑠あさ美さんです。

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「マイナスに意識が向いた瞬間に、もう自分ではどうにもならなくて、無自覚な心の沼にはまっていく人は少なくありません。クリーンな世界にいた自分が、いつしかよどんだ気持ちになっているので、明るい話も歪んで入ってきます。それは、周りからはすごい思い込みをしているとしか見えないのですが、本人は正しいと思っていて、“自分にはこう見える”という世界を貫いてしまうのです。松居一代さんが夫の船越さんに行った攻撃もそうですよね。不安の渦の中に入っていて、希望的な見方は一切しなくなるのです」

 そして、本人にとってその場所は居心地がよいのだそう。

ネガティブなマインド環境が定着してしまうと、周りの意見を一切聞かなくてすむし、自分本位の世界に入り込んでいるので、常識から逸脱しててもおかしいとは思えない。そして、誰しもが沼に落ちる可能性は持っています」

自分の軸を持つと沼に落ちずにすむ

 沼に落ちやすい人には特徴があるといいます。

「いつも自分から何かをする、能動的なDoの発想をする人、つまり自分軸、根っこを持っている人は、ちょっとやそっとのことでは揺るぎません。自分は何かをするために生まれてきて、できていないことは自分が努力すればできるという、自己効力感を持っているからです。

 でも、常に外側からの影響で生きていて、誰かに何かしてもらうことが前提の人は、根っこがありません。そういう人が沼に落ちて、自己肯定感がどんどん引き下がり、無力な自分が痛めつけられているという、被害者意識の強いよどみが生まれるのです。そんな沼に住みついてしまうと、周りからは“妖怪”として疎まれてしまうでしょう。気をつけたほうがいいのは、普通の人もそういう沼族に感化されること。真っ当に対峙すると、沼に引きずり込まれるので、妖怪化した沼族とは距離をおいて付き合うしかないのです」

 一方で、思い込みがプラスに働くと、“妖怪”ではなく“天使”になれる可能性も。

「人を幸せにする、励ませる、圧倒的なエネルギーと、圧倒的に引き下げるエネルギーがあって、この狭間に人間界があると思ってください。思い込みでも“人の役に立ちたい”と思えば天使になれるし、下に落ちていくと妖怪になるということです。アーティストやアスリートには、天使タイプの人が多いと言えます」