「一番ラッキーなのは、引退せんことや!」

 さて、日馬富士といえば、子どもに優しく、それゆえちびっ子ファンも多くて、彼が土俵に上がると、子どもたちの可愛い、舌足らずな声での「ひゃるまふじ~」という声援が飛び交うのが有名だが、今回も会いましたよ、ちびっ子ファンに。

 親子4人で訪れていた久留米のファミリーの6歳の男の子。大の相撲ファンで、4歳の妹も、お父さんもお母さんも、彼の影響で家族みんな相撲ファンになってしまったんだとか。

 日馬富士だけじゃなく、石浦、嘉風、稀勢の里、遠藤、正代(しょうだい)とご贔屓(ひいき)力士がいっぱいいて、それぞれの名前を記したカードを手作りして、頭に巻いて応援する6歳! 日本イチの好角家かもしれない。じゃ、将来はおすもうさんになるの? と聞いたら「ううん、レスキュー隊員」というのが、なんとも現実的な現代っ子だわぁ。

 日馬富士はどうなったらいい? と聞いてみたら、「捕まらんでほしいなぁ」と身体をグルグルしながら言い、そして「一番ラッキーなのは、引退せんことや!」と身体をピンとして大きな声で宣言してくれた。そのとおり、一番ラッキーなのは、それだ! 

 そして九州場所千秋楽、白鵬が優勝インタビュー冒頭で「場所後に真実を話し、膿を出し切って、日馬富士関と貴ノ岩関を再び土俵に上げてあげたいと思います」と語った。

 それを聞いてツイッターでは「よく言ってくれた」「泣きそう」「すべての心から相撲を好きな人の琴線に触れるものだった」「優勝が白鵬関で良かったなと思える優勝インタビュー」と、賛成の声が多かった。

 ちなみにツイッターには「#大好きな日馬富士」というハッシュタグができて、日馬富士ファンたちが熱い思いを連日ツイートしている。

 熱心に相撲を見るファンたちの声に、決断する方々も耳を傾けてほしい。大相撲はスポーツであると同時に、神事でもあり興行でもある。ここは大岡裁きのような情けもある決断を私はお願いしたい。


和田靜香(わだ・しずか)◎音楽/スー女コラムニスト。作詞家の湯川れい子のアシスタントを経てフリーの音楽ライターに。趣味の大相撲観戦やアルバイト迷走人生などに関するエッセイも多い。主な著書に『ワガママな病人vsつかえない医者』(文春文庫)、『おでんの汁にウツを沈めて〜44歳恐る恐るコンビニ店員デビュー』(幻冬舎文庫)、『東京ロック・バー物語』『スー女のみかた』(シンコーミュージック・エンタテインメント)がある。ちなみに四股名は「和田翔龍(わだしょうりゅう)」。尊敬する“相撲の親方”である、元関脇・若翔洋さんから一文字もらった。