母親がこの手の女だと、子どもは本当に大変だ。幼少期からこの状態が繰り返されていれば、逃げる気力も奪われてしまう。「親だから見捨てられない」という、人としての在り方を問うて自分を責めてしまうかもしれない。

 でも、主体性を奪われるのは、親子でも友人でも職場でも、どんな関係においても、不健全だ。誰かの言うとおりに生きるのはラクだが、それがうまくいかなくなったときに、誰かのせいにしてしまう危険性もある。

 冒頭の、被害者ヅラにつながっていくかもしれない。主語を自分に取り戻さないと、負のスパイラルに陥るだけ。

 実はこのドラマの初回で、母親から卒業した成功例も描いていた。男にだらしなく、娘をネグレクトするシングルマザー(青山倫子)から離れて、親戚の家に身を寄せる女子高生(山口まゆ)がいたのだ。

 山口は「親を捨ててしまった」と自分を責めるが、これは立派な親からの卒業であり、決してマイナスではない。ドラマの中で、ここだけは明るい救いでもあった。

 作品全体の大きなテーマとして、「親の在り方・子の決断」がある。きっと井上も、卒業できるのだろうと期待しているんだけど、さて、この先はどうなることやら。

 はい、今回は真面目です。このドラマを茶化してはいけないし、真摯に見守っていくべきだと思ったので。でも、「いびつな親子問題に依然として男は不在」というのは気になる。女任せ、役立たず、出番なしということなのか。