そう考えると、松居が「糟糠の妻(苦労を支えた女房)」であったことは確かだ。「私が名優・船越英一郎をつくったのよ!」と言いたい気持ちは1ミリだけわかる。1ミリだけど。

 が、糟糠の妻が自己演出にたけていて、夫の裏切りと下半身事情を世間に暴露するまでいくと、なんかもう意味が違ってくるな。「その定義、新しいね」と素直に感動したよ。

 鬼の形相と得意満面の笑みで、夫に社会的制裁を加える姿に、ちょっとだけ共感した女性も少なくない。それも一代の思うつぼなのである。

 しかも、財産分与ナシが最大の目的だったという、ある意味で清々しい銭ゲバ感。怨念や復讐というサスペンスチックな色をつけておきながら、最後は金だと。

 怖いもの見たさで松居を見続けてきた人は、うすうすわかっちゃいたけれど、これを勝ち負けととらえるあたり、ちょっと古い演出だなと思わざるを得ない。

 いまどきのネットを駆使して広くあまねく浸透させる手法と、テレビが元気だった時代の前近代的な演出手法で、まんまと話題をかっさらった松居。ハイブリッド一代。すげえ。

巻き込まれた母・政枝さん……

 朝っぱらから離婚成立の記者会見を行い、花柄ブラウスに黄色のスカート、つやつやの笑顔で登場した松居一代。かねてから松居に密着し、他局がスルーするこの案件に食らいついてきた『直撃LIVE グッディ!』は、なんと記者会見当日に松居の母・政枝さん(85歳)に密着。

 莫大な財産をもつ松居の母とは思えない、庶民的な出で立ちの政枝さん。そして、記者会見で涙の見せ場を作るために、母に電話をかける松居。でも政枝さんは言葉少なく、経緯にさほど興味がないのではないかと思われる。

 どう考えても「娘の演出に付き合わされた感」が。そして、当然だが、松居、泣いているけど涙は1滴も出ておらず。女優だな! この茶番に付き合わされるテレビ各局の間抜けなこと!