「つい先日も大阪拘置所の両親へ差し入れに行ったんです。拘置所の売店で甘栗や柿ピーなどのお菓子を買って、それをひとつひとつ用紙に記入して係の女性に渡してそれで終わり。この4か月間、息子のボクでさえ面会できへんのですよ。ひどいでしょう」

 と語るのは籠池佳茂氏(37)。今年7月末、国の補助金約5600万円を騙し取ったとする詐欺容疑で、大阪地検特捜部に逮捕された森友学園前理事長・籠池泰典被告(64)と妻・諄子被告(60)の長男だ。佳茂氏が続ける。

「取り調べはとっくに終わっているはず。両親がいま証拠隠滅しますか? (あんなに顔が割れているのに)逃亡しますか? 人権無視もはなはだしい不当な勾留ですよ!」

 父母は、エアコンも窓もないわずか4畳の独房にいる。

「そりゃ、健康状態も精神状態もおかしくなりますよ。2人とも還暦を越えているし、特に父は痛風の持病があるから心配です。母まで勾留するなんて信じられへん。これは安倍政権に都合が悪くなったための別件逮捕だし、一方的な口封じです」

 と冷静な口調ながら、眼鏡の奥は憤りに満ちていた。

絶縁状態の理由

 佳茂氏は3か月前から平日は奈良・吉野の宿舎で寝起きしながら林業に従事している。週末は大阪市内に残してきた妻と幼子2人が待つ自宅へ。

 だが、ゆったりと一家団欒というわけにはいかない。疲れた身体を休めることもなく、拘置所の両親へ差し入れし、塀の外から手製のメガホンで「籠池がんばれ!」「世の中の人は味方しているぞ!」と激励メッセージを叫ぶ。

メガホンで抗議し、両親を激励する佳茂氏
メガホンで抗議し、両親を激励する佳茂氏

 大阪地検に単独で抗議デモを行い、ツイッターやフェイスブックに頻繁に投稿し、動画をアップする。ツイッターのフォロワーは5800人まで増えた。

「僕は2男2女の長男ですが、家業を継がへんかった。厳格すぎる親への反抗だったかも……。4年半前からは、ずっと絶縁状態だった。そうなったんは、父が僕の妻との婚姻に反対して、結婚式に出なかったときから(笑)」

 今年初めから国有地の格安払い下げ問題が噴出し、連日、報道が続いた。

両親とも嘘をつくような人じゃない。まじめで教育熱心で、優しさも愛嬌もあるんですよ。恋愛結婚で夫婦仲がとてもいい。仕事では父が前に出ていますが、家庭内では完全にカカア天下です。実像とマスコミに登場する両親像はあまりにも違いすぎる」

 7月末の逮捕時にはヤバさを感じたとか。

「特定秘密保護法、共謀罪、安保改定、そして憲法改正と世の中がただでさえヤバイ方向に向かっている。強制捜査もありましたが、では、それを昭恵首相夫人にもやったのか建設業者や近畿財務局にもやったのか。やってへんでしょう。それはフェアじゃない」

 孤独な闘いを続けるのには理由がある。

「30歳を越えて結婚もしたいだろうに、妹の町浪も父の跡を継いで民事再生でガンバってますからね。ボクもガンバらなあかん」

 “モリ・カケ疑惑”とくくられる加計学園の獣医学部新設についても聞いた。獣医学部は来春の開学が決まった。

「長い目で見たら、はたしていわくつきのとこへ、いい学生が集まるんか、いい学校になっていくんかと。世間はちゃんと見ていますから。安倍首相が親友から獣医学部新設の話を聞いていなかったなんて不自然ですよ。どう考えたっておかしい」

 インタビュー取材は途中、食事を挟み7時間半におよんだ。「親孝行するため、いずれ首相に直談判したいと思っています」と力を込めた。