コース&勝負ポイントがわかると、もっと楽しい!

 箱根駅伝は、高層ビル群や湘南の海、箱根の山など、変化に富んだコースも魅力。その特徴や勝負を左右するポイントを、碓井さんが解説。

2日間のべ11時間の熱戦 ※拡大画像は写真ページで
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■1区:スピードランナーが集結

 東京・大手町にある読売新聞社前を、午前8時にスタートする。オフィス街を走るフラットなコースだが、“新八ツ山橋”と“六郷橋”が駆け引きのポイント。集団を飛び出す選手は出てくるか? それとも団子状態で牽制し合い、ラスト勝負となるか?

「1区は駅伝全体の流れを作る重要な区。各大学ともチーム屈指のスピードランナーを起用してきます」(碓井さん、以下同)

■2区:エースのぶつかり合い

 各大学のエースがプライドをかけて対決する“花の2区”。23・1kmは、復路の9区と並ぶ最長区間だ。2区最大のポイントは、難所として知られる“権太坂”。その高低差は約50m! さらに、中継所の手前にも急坂があり、エースの顔も苦痛にゆがむ。

“ごぼう抜き”も2区の楽しみのひとつですね。駅伝の醍醐味です」

■3区:準エース区間

 前半は、遊行寺の交差点付近まではゆるやかな下り。浜須賀歩道橋を過ぎ、海岸線に出ると、正面に富士山がお目見えする。各大学は往路でのリードを確実にすべく、準エース級を投入する傾向が。

「平坦なコースなので、選手は走りやすいです。でも、海沿いは、風の影響を受けやすい。体重の軽い選手は向かい風が強いと不利になります」

■4区:もはやつなぎじゃない

 かつては“つなぎの区”と言われたが、前回大会から距離が長くなり、重要度がアップ。名勝・旧東海道松並木などを抜け、国道1号線をひた走る。

「4区は酒匂橋など、橋が10か所もあります。小刻みなアップダウンに対応し、ペースをしっかり刻むことが大切です」

■5区:名物・山上り

 箱根駅伝を象徴する“山上り”。前回大会から距離は短くなったものの、小田原中継所から芦ノ湖までの標高差は800m以上。難コースであることに変わりはない。

「実はラスト4kmは急な下りなので、切り替えも重要です。最近では、5区で驚異的な走りをした選手は“山の神”と呼ばれますね。今回は現れるでしょうか?」

■6区:山下りは度胸試し

 6区は“山下り”。国道1号線最高地点までは上り、そこから箱根湯本まで一気に下る。

下りの平均速度は、時速25kmにも達します。恐怖心に打ち勝つ度胸が必要。大平台など急カーブが多く、コース取りも難しい。平らな道が、まるで上り坂に感じられる最後の3kmは、特に踏ん張りどころです」

■7区:気温差ナンバーワン

 前半の小田原市内はほぼ平坦な道のりだが、国府津駅付近から小刻みなアップダウンが続く。

最初は山から吹き下ろす風で冷え込んでいますが、次第に気温は上昇。全区間中、最も気温差が激しい。ペース配分、水分補給や体調管理がポイントです」

■8区:長~い遊行寺の坂

 スタート直後は相模湾を右手に、まっすぐ進む。湘南新道へ入って10km過ぎに小さなアップダウンが。

残り5km地点が最大の難所。約500m続く“遊行寺”の急坂が待ち構えています。前半と後半で走り方を変えなければならない、タフなコースです」

 下位チームの襷リレーにハラハラするのも、例年だいたい8区以降。

■9区:復路のエース区間

 2区と並ぶ最長距離で、“復路のエース区間”といわれている。

「9区では、勝負を決定づけるような走りができる選手が配置されますね。また、戸塚中継所を出てすぐの下り坂や、権太坂での飛ばしすぎには注意です。後半、ペースダウンしてしまいますから」

■10区:襷を確実にゴールへ

 20km付近までは1区を逆走。最後は、銀座通りから日本橋を渡り、ゴールの大手町に向かう。

「アンカーには襷を確実にゴールへ運ぶ、安定した走りが求められます。さらにゴール直前で競り合いになった場合、スプリント力が順位に直結します」

〈profile〉
碓井哲雄さん◎’41年生まれ。箱根駅伝に3度出場、中央大6連覇に貢献。中大コーチ、本田技研工業監督などを経て、現在は神奈川工科大学陸上競技部監督。箱根駅伝のテレビ解説を務めて24年。