昨年の世界選手権、7階級で優勝しメダルを手に笑顔の阿部一二三選手(共同通信社)

「現時点での“あの子”の力を見ると、ケガがなければ100%とれるんじゃないかな、と僕は思います」

 2年後に迫った'20年東京五輪での金メダル獲得を保証するのは、神戸市にある神港学園高校柔道部の信川厚監督だ。

 “あの子”とは同校の卒業生で、日本体育大学柔道部に在籍する“柔道界のひふみん”こと66キログラム級の阿部一二三選手。昨年8月に世界選手権を制した王者を、小学校から高校まで指導してきた信川監督は、いわば恩師。

「積み重ねてきた体幹トレーニングが中学3年生ぐらいに成果を発揮しだしました。本人に“どんな柔道がしたいんや?”と聞くと、“1本をとる柔道がしたい”とのことだったので、しっかり2本の腕で張り出して相手の道着をもって投げる、打ち込み練習をこなさせました」

 金メダル候補であっても、素顔は20歳の大学2年生。実力もさることながら、ルックスにも注目が集まっている。

「普段はもう、肩ひじ張るようなこともない本当に気さくな青年ですよ。周りから注目されるようになりましたが、本人はそれを力に変えて頑張っているようです。柔道の練習となるとスイッチが入るのか、集中していました」

 世界選手権では、阿部選手から“恩返し”もあったとか。

「高校時代のアメリカでの世界ジュニア選手権など、僕が海外まで応援に行くときに限って負けていたんです。そんなジンクスが2人の間にあり、“何とかこれを打破せないかんな”と(笑)。

 今回、(昨年12月に神戸市内で開かれた祝勝会で)“先生が応援に来て負けてばかりでは申し訳ないと思っていました。今回、勝つことができてホッとしました”と話してくれました。本当にうれしかったですね」

 東京五輪でも恩師の前で金メダルをとってほしい!