恋い焦がれるほどの、男と男の“恋愛”とは

 幕末の薩摩では、女に惚れるなら男に惚れろ、という気風があったという。櫻井CPは、

「この時代は男と女が手をつないで歩くような時代ではないわけです。自分の尊敬する人に対して、恋愛感情に近いものがあったのではないだろうかと。ドラマの中でもそういった形で触れていこうと思っています」

 原作では、斉彬との師弟愛も憧れを通り越し、西郷が恋い焦がれるといえるほどの熱量で描かれている。斉彬のためなら命をも投げ出す、そんな一途な主人公を演じるのは鈴木亮平。

「大変な抜擢をしていただいたという自覚があります。喜びよりも責任感のほうが大きく、身が引き締まります。しかし、俳優としてはこれ以上ない機会をいただいたので、楽しみな気持ちも大きいです」

 鈴木は2014年、朝ドラ『花子とアン』で中園との“タッグ”を経験ずみ。中園はクランクイン前、鈴木に“鍛えておいて”とリクエストをしていたという。もしかして自慢の筋肉美を楽しむことができる?

「脱がすということではなく、アクションシーンがあるからという意味だったんですけど(笑)。現場を拝見したら、想像以上に身体をつくられてたくましくなられて……。そういう野性的な部分は、最初にイメージしていた西郷さんよりも強くなっているかもしれません」(中園)

 野山を駆け、村の仲間たちと相撲をとるシーンもあるので、そこで見せる鈴木の肉体美は、要注目! そんな主役の脇を固める俳優からも目が離せない。幼なじみで親友として、ともに国のためにと働き、最後は袂(たもと)を分かつ大久保正助(利通)を瑛太。西郷に人としての生き方を教える藩主・島津斉彬を渡辺謙など、ベテランから若手まで人気俳優が顔をそろえている。

 特に瑛太は、鈴木が“できることなら大久保をやってほしい”とひそかに願っていたキャストだという。この思いは誰にも言ってなかったというが、キャスティングをしたスタッフとも同じ思いを共有していたということ。不思議な偶然に、

「巡りあわせのようなものを感じます。瑛太くんは、僕の持っていない感性をたくさん持っている方だという印象があるので、その違いをうまく生かしつつ、西郷と大久保が仲よくなり対立していく様子が演じられるのでは、と今から楽しみです」

 大河初出演の鈴木に対し、瑛太は『篤姫』以来10年ぶり2回目の出演。前回は島津藩の家老・小松帯刀を演じ、大久保を配下に従えていた。鈴木からの“ラブコール”にテレながらも、

「僕は『篤姫』のときに経験していますが、1年2か月の撮影は大変なことがたくさんありました。でも、今思い返せば本当にいい思い出ばかり。自分が俳優として、ものすごくステップアップできたという記憶があります」