北は日本酒、南は焼酎

 3年前から仕込みの現場にも入っている。

「よく混同されるんですが蔵のオーナーが蔵元、お造りの最高責任者が杜氏(とうじ)です。昔は蔵元と杜氏が別の人というのが普通でしたが最近は2つを兼ねるケースも見られます。また、杜氏は出稼ぎスタイルで、造期以外は地元で米を作ったり漁をしたりという生活が一般的。でも、最近は社員として通年雇用するパターンも増えています」(喜多さん、以下同)

 同じ米と水を使っていても味が異なる理由についてこう教えてくれた。

「ひとつは酵母。香りのある酵母を使うか酸味のある酵母を使うかで、仕上がりは全然違います。もうひとつは日本度、つまり甘口と辛口の作り分け。液体にどのぐらいの比重で糖を残すかという調整です。最近の若い人は軽快な味を好みますね」

 さらに驚くのは、日本造りの現場に携わるスタッフの徹底した自己管理。喜多さん以下、『喜楽長』の造りに携わるメンバーは、造期に納豆は一切食べない。納豆菌は強力なため、おを腐造させてしまうからだそう。加えて、風邪をひかないよう万全の対策をとって造期を乗り切るという。

 最後に、日本文化圏と焼酎文化圏についても触れておこう。

 前出の伊藤さんが言う。

「一般的に北は日本、南は焼酎に分類できます。伝統的な乙類焼酎の本場は熊本南部と宮崎、鹿児島、沖縄。この地域には日本の蔵はほとんどありません。一方で長崎、佐賀、大分、福岡にも焼酎蔵はありますが、日本の蔵も多い。特に福岡には日本蔵が50以上あり、日本でも有数。むしろ日本どころといってもいいぐらいです」

 日本について知れば知るほど味わい方も深くなるもの。とはいえ、自慢げに知識をひけらかして辛口の批判を浴びないように!