テレビを見ていて「ん? 今、なんかモヤモヤした……」と思うことはないだろうか。“ながら見”してたら流せてしまうが、ふとその部分だけを引っ張り出してみると、女に対してものすごく無神経な言動だったり、「これはいかがなものか!」と思うことだったり。あるいは「気にするべきはそこじゃないよね〜」とツッコミを入れたくなるような案件も。これを、Jアラートならぬ「オンナアラート」と呼ぶことにする。(コラムニスト・吉田潮)
吉岡里帆

 

オンナアラート#7『きみが心に棲みついた』

 正月ボケのせいか、なかなかアラートが鳴らずに平穏な日々を過ごしておったら、急にきたよ! とんでもないオンナアラート案件が! 独特の上昇志向が漏れ始めて、じわじわと世の女性たちから嫌われ始めている吉岡里帆が主演の『きみが心に棲みついた』(TBS系/毎週火曜22時)である。

 吉岡は自分に自信がなく、いつもおどおどして挙動不審になってしまうため、「キョドコ」と呼ばれる役柄。うんうん、世の中には不器用なキョドコさん、結構いるよね。でも全国のキョドコさんたちからは、めっちゃブーイングきそうな設定にアラート鳴りまくり。

 自信がないわりに目立つことを平気でやりよる、吉岡。合コンの席で立ち上がって、ドン引きするような自己紹介。しかもグラス倒して、大迷惑。口癖は「どうせ私なんか」。ありのままの自分でいたいと大声でアピールしちゃって。

 さらに、案外、積極的に男に向かっていく。合コン初対面で毒舌を吐いた桐谷健太に、「付き合ってください」と言っちゃうなんて、メンタルつええな!おい! まともな感覚の持ち主なら、この子はかなりキツイわぁと思う。

 弱者の皮を被った合コン王者である。桐谷がそんな吉岡に対して、冗談で言ったセリフが非常に秀逸かつ、的を射ていたので、ここに記しておきたい。

「私なんか、って謙虚なフリした予防線で卑屈だよな。なのに、ありのままの自分を受け入れろって傲慢だし。ありのままの自分って、努力したくない、変わる気ないって言ってるようなもんでしょ。大人なのに人見知りだって宣言するのも、周りに気を使え、わかってくれってことだし、そのくせ自分の意見は言わないで、人に流されて人のせいにしてたら、恋愛なんて無理じゃない?」

 もう、ホントおっしゃる通り。桐谷が演じる役の言葉や感覚に、心の底から共感したのは初めてだ。初回でこれだけアラートを発動させる吉岡里帆、そして桐谷がものすごくまっとうに見えるこのドラマ、まずは大成功である。私は大好き、こういうやつ。