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「また買えばいっか」と、海外製の安い日用品や洋服を何度も、何度も、買い直していませんか? 消耗品に疲れ、「安モノより、ホンモノ」を求める人たちは今、国内に目を向けています。次世代の「MADE IN JAPAN」がブームになりつつある理由を『ディスカバー・ジャパン』統括編集長・高橋俊宏さんにお聞きしました。

1万円の器も30年使えば、年間300円

 伝統工芸、日本のモノ作り、メードインジャパン……。安くておしゃれな海外製品が手軽に購入できる昨今、かつて世界に胸を張れたこれらのフレーズには「品質はいいけどダサイ」、「必要以上に割高」、「外国人観光客向け」といったイメージがつきまとうようになった。あるいは、昔気質の職人が、頑固一徹、黙々と作り続ける浮世離れした作品のようなものを想像する人がいるかもしれない。

 しかしいま、そんな印象を180度ひっくり返す、次世代の「MADE IN JAPAN」が次々と生まれ、ひそかにブームとなりつつあることをご存じだろうか?

 2008年、その変化にいち早く着目し、「日本の魅力、再発見」をテーマにした雑誌『ディスカバー・ジャパン』(エイ出版社※エイは木へんに世)を創刊したのが高橋俊宏編集長。以前は、「日本でも北欧スタイルで暮らします」という、真逆のテーマを掲げた雑誌『北欧スタイル』を作っていたという。

「日本の魅力に目を向けた雑誌を立ち上げようと思ったきっかけは、北欧デザイン界の巨匠、ハンス・J・ウェグナー氏のお宅を取材していたときのことです。彼の奥さんにね、怒られたんですよ。“こんなところまで何しに来たんだ。あんたの国には、いいものがたくさんあるじゃないか!”って(笑)」

 壁に飾られた蓑、棚に並ぶ焼き物、天井からぶら下がるぼんぼり。あらためて見渡すと、巨匠の家の中は日本のモノでいっぱいだった。

「なんて馬鹿なことをやっているんだろうと思いました。日本に北欧の暮らしを取り入れようとしたら、お手本にする相手は、日本のモノを暮らしに取り入れている。だったら僕が作るべきなのは、自分の国の本なんじゃないかと」

 創刊当初は、北欧の大型家具店やファストファッションが次々と日本に上陸しており、安価でスタイリッシュな海外製品の全盛期。日本の伝統工芸を謳った器や道具は“一級品”というイメージに甘んじていた面もあり、積極的に扱うのは、一部のセレクトショップに限られていた。

 ところが近年、売り方や売り場までデザインするなど、買い手に届ける工夫もなされ、百貨店などでも、MADE IN JAPANのモノを見かける機会が増えてきた。その背景には「2つの大きな変化」があると高橋さんは語る。

「1つ目は作り手の変化。僕自身、最初は南部鉄器など、いわゆる昔ながらの伝統工芸品をいかにカッコよく見せるかということを考えていました。けれど実際にはどのジャンルでも代替わりが進んでいて、若い後継者たちがどんどん新しいことに挑戦している。見た目をモダンにしたり伝統の技術を生かして現代のライフスタイルにフィットする商品を作ったり……。要は純粋に“カッコいいな”“センスいいな”と思えるモノが増えてきたんです

「日本のものづくりを応援しよう」とか、「伝統を守ろう」なんて前置きがなくても、シンプルに欲しいと思えるモノ。それが認知されるにつれて、売り場は拡大している。

「例えば伝統的な茶筒を応用したコーヒー缶など、海外からも高く評価される商品を生み出す職人、いわば新時代の“スター”も続々登場しています。彼らに触発された職人が負けじと新たな試みを始めて、日本のモノ作りはおもしろいことになっていますよ」