各地で盛んになる「本をめぐる活動」

 永江さんは’07年の第15期から、JPIC(一般財団法人出版文化産業振興財団)で「読書アドバイザー講座」の監修・専任講師を担当している。同講座は1993年に開始。毎年100人が本と読書の専門家による講義を受ける。北海道から沖縄まで、全国から集まった受講者は主婦や教員、図書館員、書店員などその立場はさまざまだ。

「子育てを終えた主婦が、児童文庫や高齢者施設での読み聞かせを始めるように、本を介しての自己実現を求める人が増えてきました」

 と永江さん。そのニーズの大きさはJPIC事務長の中泉淳さんが「毎回、抽選になるほど参加希望者が多い」と言うことからも明らかだ。

「JPICでは、各地で読み聞かせサポーターを養成する講習会を開催していますが、のべ4万人以上が参加しています」(中泉さん)

 また、JPICでは出版社と連携して読み聞かせのキャラバン隊を派遣したり、絵本で町づくりをしようという自治体への協力も。

「地方では従来からある書店が減少していますが、小さな本のセレクトショップや、民間のマイクロライブラリーと呼ばれる私設図書館などが新しく出てきています。大きなビジネスにはならないかもしれませんが、本は地域に根差した“小商い”と相性がいいんじゃないでしょうか」(中泉さん)

多様化する図書館と読書のこれから

 本と出会う場所として、図書館の存在は大きい。

「いまの図書館はどんどん多様化しています」

 とは、図書館事情に詳しいジャーナリストの猪谷千香さん。東日本大震災でいち早く図書館が復興したことを知り、図書館の取材を始めた。

「それまで自分の町の図書館しか知らなかったのですが、各地でいろんな取り組みをしていました。例えば神奈川県の川崎市立宮前図書館では、住民の高齢化をふまえて『認知症にやさしい図書館づくり』を行っています。長野県の伊那市立高遠町図書館は、城跡図や城下町古地図が見られるアプリの開発に関わり、注目されました

 図書館を含む複合型施設も増えているが、「東京・武蔵野市の『武蔵野プレイス』は素晴らしいです」と猪谷さん。

『武蔵野プレイス』は図書館をはじめとして、生涯学習、市民活動、青少年活動を支援する機能を持ち、それぞれが連動している。青少年の専用フロアもあり、彼らの新しい「居場所」になっているという。

「これからの図書館は貸し出し冊数や来館者数を指標にするのではなく、10年、20年後も飽きられず、地域の住民の財産になるものであってほしい」(猪谷さん)