2月2日から東京芸術劇場で上演されていたのは、石原さとみ主演の舞台『密やかな結晶』。4年ぶりの舞台出演となる石原に世間の注目も集まっているようで、この日は834人を収容する劇場はほぼ満席状態だった。

「もう一度、舞台をやりたい」

「舞台は、“鳥”や“香水”など私たちの生活を形作るさまざまな物が消滅してしまうという不思議な島が舞台の作品です。その物が消え、それにまつわる記憶もなくなってしまうというファンタジー要素の強い物語。原作小説を書いた『博士の愛した数式』の小川洋子さんも舞台版を称賛していましたよ」(演劇ライター)

 物への記憶が消滅する不思議な島で、石原が演じたのは小説家の“わたし”役だ。これまでとは違う気合の入れようだったそうで、カーテンコールも3回起こったという。

「ドラマや映画のイメージが強い石原さんですが、舞台への思いはそうとうなもの。月9の主演や出演映画の大ヒットが叶い、歳を重ねた今、もう1度舞台をやりたいと1年前からマネージャーに打診していたそうです」(スポーツ紙記者)

 '08年に新人女優の登竜門である故・つかこうへいさんの舞台『幕末純情伝』で主演の沖田総司役を演じた石原。それから10年の歳月がたったが、いまでもそのときの経験が彼女の舞台観に大きく影響しているそうだ。

「つかさんの演出では本番中であってもセリフや段取りが変わるといったことは日常茶飯事。でも、それは1回1回の公演をよりよくしていこうという思いから。彼女が人一倍、稽古を大切にしているのは、つかさんとの時間があったからなんです」(前出・演劇ライター)

 そんな思いがあって『密やかな結晶』の座組みが実現。演出には、『ザ・寺山』で演劇界の芥川賞といわれている岸田國士戯曲賞を受賞した鄭義信を迎えたが、これも石原が望んだ。

「石原さんが『幕末純情伝』の仕事を受ける前のことですが、つかさんの舞台に草なぎ剛さんと広末涼子さんがそれぞれ出演していたことがあって、彼女は2人にずっと憧れていました。そんな2人が、その後、出演したのが鄭さんが演出した『ぼくに炎の戦車を』だったんです。それ以来、彼女の心に鄭さんの作品が強く残っていたそうです」(芸能プロ関係者)

 久しぶりの舞台出演は、ドラマや映画の仕事が続き、なかなか舞台が入れられなかったという経緯がある。