妊娠した女性自らの意思で決定することを尊重

 日本国内には妊娠葛藤相談の窓口は47か所ある(※詳細は一般社団法人全国妊娠SOSネットワークのHPを参照 http://zenninnet-sos.org/)。「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」を設置する熊本県の慈恵病院が最も有名だろう。そのうち4分の3が行政や行政の委託による運営で、残りの4分の1は民間が運営している。「にんしんSOS東京」は2015年9月に発足した、まだ若い民間団体だ。

慈恵病院に新規の相談だけで毎年何千件という相談が寄せられていて、そのうち3割が東京からだということを蓮田(太二)理事長から伺いまして。“東京の相談は東京で受けないと、救える命も救えないよね”って言われたことが、ひとつきっかけになりました。

 また、私が助産師として地域で活動している中で出会った、未婚で妊娠した10代の女の子が、ツイッターで同じように妊娠した子の相談に乗っていたんです。“窓口があったら私も相談したかった”ってその子に言われて、この子が他の子の相談に乗っているのに、私たち現場にいる人間にもまだまだできることがあるのではないかと思って。それぞれの動機をもった助産師6名と社会福祉士1名でスタートしました」

左から、「にんしんSOS東京」の大庭美代子さん、中島かおりさん、吉田麻紗子さん
左から、「にんしんSOS東京」の大庭美代子さん、中島かおりさん、吉田麻紗子さん
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 妊娠葛藤相談は電話やメールだけでの相談というのがほとんどの中で、「にんしんSOS東京」は同行支援を行っていることが特徴だ。相談した女性は、その時点では自分がどうしたいのか定まっていないことも多いので、必要な情報を提供しながら、実際に会って行政や病院など関係機関に同行して支援を行う。産む産まない育てる育てないにかかわらず、その女性自らの意思で決定することを尊重している。

 相談員の方たちの粘り強く、女性の気持ちに寄り添った丁寧で誠実なアプローチが、彼女たちの心を開いている。2015年11月から2018年1月までの新規相談者は1000人を超えた。総相談件数は5500件に上る。相談件数の増加に伴い、現在スタッフは22人となったが、それでも手一杯の状態だという。

「相談者の方の年齢は幅広く、10代が30%、20代が37%、30代が18%、40代が3%、50代が1%です。また、未婚は70%、婚姻中は19%と、結婚していても思いがけない妊娠に悩む女性は少なくないです」