タイトル獲得は時間の問題

 いったいなぜ、そこまで強いのか?

「彼は、将棋のルールを用いたパズル“詰将棋”でも非凡です。小学校6年生のときに『詰将棋解答選手権』でプロのトップ棋士らをのきなみ抑えて優勝しています。12歳でプロ棋士以上の計算能力を持っていたということです」(青野九段)

 同大会の優勝者は東大に入れるほどの計算能力があるとか!

中学生で奨励会初段になれば“将来の有望株”、同じく三段で“将来の名人候補”と言われます。ところが、藤井さんは中学生にしてすでに六段です。もし、漫画やドラマのシナリオだったら、“やりすぎで設定にリアリティーがない”とダメ出しされるでしょう(笑)。それほど強いんです」(松本さん、以下同)

 藤井六段は、史上5人目の中学生棋士。その先輩は加藤一二三九段、谷川浩司永世名人、羽生善治永世七冠、渡辺明永世二冠……いずれも竜王か名人まで上りつめた逸材だ。当然、藤井六段のタイトル戴冠に期待が集まる。

「現在、藤井六段は王座戦や竜王戦などに残っています。勝ち進めば秋口の王座戦が最短のタイトルとなります。また、現在勝ち進んでいる竜王戦であと2連勝すれば、昇段規定を満たして、5月ごろには七段に昇段する可能性もあります」

 現在のタイトル獲得最年少記録は、棋聖戦を制した屋敷伸之九段の18歳6か月だ。藤井六段は15歳7か月。まだ3年近くある。さらに、青野九段はこう語る。

「デビュー間もないころの羽生さんは粗削りでした。序盤は不得意で、つけ入る隙があったんです。ところが藤井六段は序盤・中盤・終盤と完成されていて隙がない(苦笑)。若くして完成されすぎてることが、逆に若干の不安要素かもしれません。それでもタイトル獲得は時間の問題でしょう」

 誰が藤井六段を阻むのか? 盤上のドラマは、さらに盛り上がること必至だ。

教えてくれた人
青野照市九段◎棋士。師匠は広津久雄九段。21歳で四段昇段。トーナメント戦で5回優勝。公益社団法人日本将棋連盟の理事を長く務めた。『9マス将棋』の考案者でもある

松本博文さん将棋中継記者、ルポライター。東京大学将棋部OB。在学中より将棋書籍の編集に従事。『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)など著書多数

伊藤かりんさん◎『乃木坂46』メンバー。『将棋フォーカス』(毎週日曜10時〜NHK Eテレ)の司会を務めて3年目。アマチュア1級。シングル『シンクロニシティ』は4月25日発売

※称号や段位などは'18年3月1日現在

※1タイトル戦開催地のホテルなどで行われている。詳細は、日本将棋連盟のサイト(https://www.shogi.or.jp/)で