テレビを見ていて「ん? 今、なんかモヤモヤした……」と思うことはないだろうか。“ながら見”してたら流せてしまうが、ふとその部分だけを引っ張り出してみると、女に対してものすごく無神経な言動だったり、「これはいかがなものか!」と思うことだったり。あるいは「気にするべきはそこじゃないよね〜」とツッコミを入れたくなるような案件も。これを、Jアラートならぬ「オンナアラート」と呼ぶことにする。(コラムニスト・吉田潮)
写真家・荒木経惟

 

オンナアラート#11 荒木経惟

 私事で恐縮だが、父を老人ホームに入居させまして。今年に入ってかなりいろいろなことがあり、要介護4に昇格した父。24時間介護する母の疲弊と絶望感を考えると、選択肢はひとつしかなくて。77歳・喜寿を迎えるとともに、入居してもらったのだ。

 ええと、老人介護の話、ではない。77歳がキーワードだ。ちょっと前になるのだが、3月18日にNHK BSプレミアムで放送していたのが『写真家 荒木経惟 77歳の切実』である。天才アラーキーの作品と人物にクローズアップしつつ、ナビゲーターとして女優の満島ひかりが写真展に訪れる、という番組だった。

 満島はアラーキーを崇(あが)め、作品も人物も褒めちぎり、「神様と一緒にいるみたい」と話す。アラーキーも気分よく応対し、満島の写真を撮り始める。前立腺がんを患い、右目の視力を失い、死をも覚悟したアラーキーだが、まだまだ今年も海外で個展を開くなど、精力的に活動していくという。同じ77歳でこうも違うのか。つい父と比べてしまったのだ。

 そういえば、我が家にもアラーキーの写真集がある。13年前、新宿に住み始めたときに勢いで買ってしまったのが『森山・新宿・荒木』(平凡社)である。写真家の森山大道とアラーキーが新宿を撮影した写真集だ。芸術センスの欠片(かけら)もない人間ほど、アートに触れたがり、所有したがるものだ。私もそのひとりだ。3500円もしたよ。

 また、私の友人は若い頃「アラーキーのミューズになりたかった女はたくさんいる」と教えてくれた。名を馳せたい、顔を売りたい、ミューズとしてチヤホヤされたい。「自分もそのひとりだったなぁ。そういう時代だったのよ~、サブカル全盛期は」と告白した。

 ところが、である。アラーキーの元ミューズだったダンサーのKaoRiさんの記事が、Twitterのタイムラインに流れてきて、衝撃を受けた。4月1日に「note」にUPした記事のタイトルは「その知識、本当に正しいですか?」である。