地元の人々に愛され続けている小さな店から、都市の高級サロンまで、私たちに自信と安らぎを与えてくれる美容室。現在、その数は20数万軒に及び、一説にはコンビニの数より多いと言われている。そんな美容室を舞台に、美容一家として血脈を継いできた朝倉家の女性による四代記が、『週刊女性』本誌のGW合併号より始まる。描き手は、華麗なタッチでドラマチックなストーリーと繊細な女心を紡ぐマンガ家の桜沢エリカさんだ。

「今回のお話をいただいた際に、編集長から“うちの雑誌はよく美容院に置いてもらっているので、美容師の話はどうでしょう?”と言われたんです。実は、美容師を好きになる女の子の話は描いたことがあっても、美容師が主人公のお話は描いたことがなくって。

 改めて戦前・戦後を生きた美容師さんの資料を読んでみたんですけど、みなさん強い信念のもとに激動の時代を強くしなやかに生きていらしたんですよね。これは女性の応援歌になるような物語ができるのではとワクワクしています」

 壮大なドラマを予感させる桜沢さんの新連載、タイトルは『こまどりの詩 ~ビューティーレジェンド四代記』だという。

「見た目は愛らしいこまどりですけど、十字架にかけられたキリストを助けようとして胸が赤くなったとか、いさましい伝承がたくさんあるんですね。

 実際、縄張り意識も強いらしくて、女の城を守り続けた朝倉家の物語にぴったり。このほかにも、さまざまなエピソードを持つ鳥なので、追い追いストーリーに絡めつつ出していければと思っています」

 4世代の話ということもあり、現代、バブル期、高度成長期、戦後復興期といった時代ごとのファッションや流行、風俗の違いなども見どころのひとつ。

「いま、美容界のレジェンドに取材をさせていただいている最中なのですが、流行の髪型やパーマの方法はもちろんヘアケア剤ひとつとっても昔と今ではまるで違ったみたいで。

 昔のセットローションは糊みたいにベタベタしていて、つけた後に櫛でとかすと白い粉が浮いてきたそうです。今では考えられないですよね。歴史の考証は大変な作業ではありますが、“これ流行ってた! 懐かしい~”そんな楽しみ方もしていただけると思います」

 桜沢さんのペン先が描きだすモダンなファッションや髪型はもちろん、背景や小道具にも要注目だ。

自身の原画を前に
自身の原画を前に

 髪をキレイにしたときの高揚感や、自信を持たせてくれるという意味で、美容室は女性の味方。きっと朝倉家も、世の女性を応援するという意味では同じ方向を向いているのだろう。しかし、全員が同じ価値観で働いているとは限らない。

もちろん、親に反発する世代も出てくるだろうし、時代にフィットしたテクニックを追求するうちに、確執が生まれることもあると思うんです。

 そのあたりの葛藤もバリバリ盛り込んでいく予定なので、みなさんも自分の問題としてとらえていただくことができるのかなと思っています。母と娘って本当に一筋縄ではいかないですから

 そこで、より一層気になってくるのが各世代のキャラクターについて。

「この美容室の創設者は曽祖母のキク乃さん。女性の地位がまだそんなに高くない時期に自分の城を構えたんですから、バイタリティーがありますよね。

 祖母の椿さんは情熱を秘めた人ですね。若かりしころのロマンスが原因で一家に大波乱を引き起こすのですが、それはぜひ本編でお確かめください。母の藤子さんは苦労人ですが美貌の人。娘の茉莉花は現代的な冷めた部分と母譲りの情熱を兼ね備えた人だと思います。もしかしたらいちばんバランスがとれているタイプかもしれません」

 それでは最後に新連載への意気込みとメッセージを!

キツい仕事の後や、つらいことがあったときでも、読めば元気が出るような強く美しいキャラクターが活躍する物語を紡いでいけたらと思っています。

 女同士の嫉妬や執念、うらみ節といったドロドロ展開あり、一気に心を鷲づかみにされる心の師匠との邂逅(かいこう)あり、ありとあらゆるドラマを盛り込んでいくので期待していてください。

 そうそう、ロマンスグレーのオジサマや生意気な年下男子など、イケメンも次々に登場させる予定です。とにかく楽しんでいただければと思っておりますので、応援よろしくお願いいたします

<プロフィール>
桜沢エリカ(さくらざわ・えりか)◎東京生まれ。10代でデビューして以来、コミック誌やファッション誌など多方面で活躍中。女性の心情をリアルに描写した漫画やイラストを多く手がけるほか、そのファッションセンスも注目を集める。『世界の終わりには君と一緒に』ほか、著書多数。

<取材・文/山脇麻生>