そんな現代社会が抱える深刻なテーマを扱いつつ、明るく痛快なエンターテイメント小説に仕上げた本作。女性読者なら駒子に共感したり、男社会の理不尽さに腹を立てたりしつつ、最後は爽快な気分でこの本を閉じることになるはずだ。

『駒子さんは出世なんてしたくなかった』碧野圭=著(キノブックス/税込み1620円)※記事の中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします
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「やっぱりエンタメは、楽しくて救いがないとね。それに若い世代の男性の意識はずいぶん変化しているので、男女雇用機会均等法以前に入社した頭の古い男性たちが退職したら、日本の会社も変わるはず。だから、あと5年か6年のガマンですよ(笑)。それに女性管理職が一定数まで増えてしまえば、女性の出世も特別なことではなくなり、駒子みたいな思いをする人も減ると思う。

 だから自分に出世のチャンスが与えられたら、ぜひ引き受けてほしい。女性たちにはこの作品を通して、“みんなで仲間を増やしましょう!”と伝えたいですね」

ライターは見た! 著者の素顔

 ライター、編集者、小説家と、これまで「本」に関わる仕事を続けてきた碧野さん。「物心ついた時から本が好き。幼稚園のころも絵本ではなく世界文学全集などの小説を読んでいたし、小学校では図書室の貸し出し数ナンバーワン。それ以外に趣味がないので、大人になっても本の近くで仕事がしたかったんです」。現在も編集者として東京・小金井市周辺の地域雑誌を仲間とともに発行している。「お金は全然儲からないけど(笑)、やっぱり私は本を作るのが好きなんです」

<プロフィール>
あおの・けい◎1959年、愛知県生まれ。東京学芸大学教育学部卒。フリーライター、出版社勤務を経て、2006年『辞めない理由』で作家デビュー。ベストセラーとなりテレビドラマ化もされた『書店ガール』シリーズ、フィギュアスケート小説『銀盤のトレース』シリーズなど、著書多数。

(取材・文/塚田有香)