人生のパートナーに求めるモノ

 鋼太郎は、職場の部下である田中のことを「可愛すぎる」「存在が罪」と評価している。要は、仕事上で、あるいはビジュアル面での田中に惚れている。10年間秘めてきた思いを考えると、「一時の迷い」と一蹴できない。

 一方、林は短期間とはいえ、田中とともに生活し、イヤなところもつぶさに観察している。「優柔不断」「朝、不機嫌」「服脱ぎっぱなし」「好き嫌い多い」「靴揃えない」「皿洗いしない」「ちょっとそれひとくちちょうだい、という」「改札で引っかかる」「方向音痴」「うつぶせで寝る」。

 後半はよしとして、前半は問題だ。夫婦間でもよくある愚痴ネタでもある。

 一緒に暮らす人間の一挙手一投足に不満がある場合、愛は擦り減っていかないだろうか。それでも面倒見のいい林は、田中に小言をぶつけながらも情がわいていく。

 もちろん、生活を共にしない生き方もある。結婚にこだわらない生き方もある。恋愛感情を抜きにした共同生活という提案は、大人気を博したドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)が可能性を示唆し、「それもアリじゃね?」という立証済みだ。

『おっさんずラブ』は単なるBLラブコメディで終わるものではない。快適で心穏やかな生活、自分にうそをつかない人生を手にするために奮闘する人への応援歌なのだ。


吉田潮(よしだ・うしお)◎コラムニスト 1972年生まれ、千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。テレビ『新・フジテレビ批評』(フジテレビ)のコメンテーターも務める。また、雑誌や新聞など連載を担当し、著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『TV大人の視聴』(講談社)ほか多数。新刊『産まないことは「逃げ」ですか?』に登場する姉は、イラストレーターの地獄カレー。公式サイト『吉田潮.com』http://yoshida-ushio.com/