「常に大人の目が必要」

「事前の調査を綿密にしている。ターゲットを決めて、1~2週間ほど観察し、何時ごろにどこを通るか、どこからひとりで歩くなどと調べ上げ、待ち伏せポイントで誘拐をするのです」

 これらは幼児誘拐をして服役中の受刑者から聞き取り調査し、浮かび上がった手口だ。抑止力になるのは地域の目だと、出口教授が続ける。

「最も多い犯行時刻は午後3~4時台の路上で、ターゲットは7~8歳。つまり小学校低学年の学校帰りなんです。この時間帯に、地域の人に玄関先を掃いてもらうとかすればいい。犯罪者は人の目を非常に気にするんです。これも受刑者の生の声です」

 さらに子どもには緊張感の大切さを説く。

「犯罪者が襲うかどうか最後に判断するのは、相手が緊張しているかどうか。緊張している子は、襲った瞬間に大声を出したり、暴れたりするかもしれない。逆に安心しきっている子は襲いやすい」

 碓井教授も、「子どもを孤立させないために、常に大人の目が必要」と訴える。

「地域住民と子どもが気軽にあいさつできるようにしておく。見守り活動も“ながら見守り”がいい。ガーデニングの水やりや犬の散歩の時間は、登下校に合わせる。余裕があれば夕方は玄関のドアを開けっぱなしにして、家の前を通る子どもの様子を見る」

 と提唱しつつ注文もつける。

「見守りする方が、深刻な顔をしてちゃいけません。子どもを安心させるのは笑顔です」

 昨年3月、ベトナム国籍のリンちゃん(当時9歳、小学3年)が、保護者会会長に殺された千葉・松戸市は、地域の見守り体制を強化した。昨年6月にスタートしたのが、『六実っ子安心安全見守り隊』だ。松戸市・市民安全課の倉林真帆主事に話を聞いた。