塩分取りすぎにはカリウムをとればOK?

 カリウムは塩分を体外へ排出する効果が。ということは、カリウムを多く含む品をとれば、チャラにできる!?

「それはウソ。いったん体内に取り入れたものを、ほかの栄養素で打ち消すのは困難です。過剰な塩分をカリウムでなかったことにしようとするのは、無理があります」

 と植田先生はバッサリ。最新の研究もそれを裏づけている。日本、中国、 イギリス、アメリカの国際共同研究チームの調査では、ナトリウムを含む80種類の栄養素の摂取データを解析したところ、ほかの栄養素を摂取しても、ナトリウムの血圧への影響は低下しなかった。

「罪滅ぼしは効かない、ということです。そもそも、塩分のとりすぎ自体が身体によくありません。高血圧や心臓病、脳卒中といった病気を招くおそれがあります」

ヒトが1日に必要な塩はひとつまみ?

「これはホント。1日1・5gが適量という研究もあります」

 と稲島先生。1・5gとは、ひとつまみより少し多いぐらい。そればかりか、「塩は少なければ少ないほうがいい。とにかく減らすことです」と強調する。

「実は、肉や魚、野菜からもナトリウムをとっています。すべての生き物には細胞があり、その中にはナトリウムが含まれているからです。精製した塩をいっさいとらないアマゾン川流域に住むヤノマミ族でも、塩分にして1日3g相当のナトリウムを摂取していると言われています」

 熱中症対策に塩分が必要といわれているけど?

「熱さ対策と水分の摂取を優先して、汗をかくときなどに塩分をとるようにしては? 熱中症対策と言いながら年中、塩分をとりすぎる人もいますが、それでは高血圧や動脈硬化などのリスクを高めます


〈お話を伺ったのはこの3人〉
稲島 司先生
総合内科専門医、循環器専門医。地域医療連携にも取り組む。大量の文献を、ユーモアを交えながら紹介していく講演が好評。『世界の研究者が警鐘を鳴らす「健康に良い」はウソだらけ』(新星出版社)ほか著書多数

植田美津恵先生
医学博士、医学ジャーナリスト。愛知医科大学客員教授、東京通信大学准教授。各大学にて教壇に立つほか、医学番組の監修、テレビコメンテーター、講演活動を行う。近著に『忍者ダイエット』(サンドランチ)

小川 徹先生
皮膚科専門医。早稲田大学招聘研究員。元慶應義塾大学研究員。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校、英ロンドン大学セントトーマス病院などで国際的に活躍中。医学博士のほかMBA、公共政策の修士号を持つ