前事務所に芸名の使用禁止を強いる法的な根拠はあるのか─。芸能トラブルに詳しい、レイ法律事務所の河西邦剛弁護士に話を聞いた。

「事務所はタレントに資本を投下して育てるわけですから、それを回収する権利があります。ですが、広瀬さんはこの事務所で30年近くも芸能活動を続けています。資本は十分に回収できているので、法的には認められにくいでしょう。広瀬さんが一方的に契約を終了させたとしても同様です」

 たとえ覚書があったとしても、差し止め請求が認められる可能性はかなり低いという。

「“辞めたら芸名を使わせない”は、“事務所の言うことを聞け”ということ。これはもう嫌がらせですよね」(河西弁護士、以下同)

 ローラや真木よう子、清水富美加など事務所とトラブルになる芸能人が増えている。

「タレントは芸能事務所の労働者なのか、フリーランスの個人事業主なのかという位置づけは、これまでは法律的に空白地帯だったため芸能事務所のほうが優位でした。ですが、今年2月に独占禁止法が適用される範囲が見直され、“事務所側が芸名の権利を主張して移籍を制限すると、独占禁止法の問題が生じる”と明確化されたのです

 今後、カラオケで『ロマンスの神様』が歌えなくなる可能性はあるのだろうか。

「ありえません。芸能事務所は詞と曲の権利を持っていませんからね。カラオケで曲が消えることも、広瀬さんが歌えなくなることもないです」

『ロマンスの神様』では“勇気と愛が世界を救う”と歌っていたが、いざというときに救ってくれるのは、やっぱり“法律の神様”なのだ。