今年1月、札幌市で「8050問題」を象徴する事件があった。アパートの一室で、82歳の母親と52歳の娘の遺体が発見された。娘は長年ひきこもりで、母親が亡くなった後に衰弱死したとみられる。

経験者の話

 社会や他人に対してSOSを発することが困難なほど、対人関係に怯えるひきこもり。そうなるきっかけは人さまざまだが、

「人生のライフステージをきっかけに起こりうる」

 と前出・深谷さん。

「転職先で外様扱いをされたことでひきこもりになった方、離婚や就活の失敗が原因になったケースもあります。非常勤の仕事に就くことができても、親からは終身雇用の価値観をかぶせられ、よりつらくなったりする」(同)

 さらに、コミュニケーション力が必要とされる現在の産業構造も、ひきこもりを増やした要因とみる。

 深谷さんが続ける。

「今の仕事はコンピューターにはできないコミュニケーション力を要するものが大半。全員が長けているわけではないので、つまずく人は出ます」

 長期化、泥沼化するひきこもり。

「ひきこもりの期間が長いとそれだけ、回復するのに時間がかかります」(前出・深谷さん)という。

 週刊女性は、立ち直った人に話を聞くことができた。

 首都圏在住の40代の牧野達夫さん(仮名)。39歳の年にひきこもり生活に入った。

「きっかけは病気でした。家族性地中海熱という自己炎症疾患なのですが、発症当時はどこの病院でも原因がわからなかった。睾丸に痛みが出たのですが、泌尿器科を回っても、病気が見つけられない。そのうち心身症と診断されて、精神科に回されました