順風満帆な20代も心のうちでは葛藤

 ’87年に始まった田原俊彦との共演ドラマ“びんびん”シリーズでの気弱なイケメン、榎本役でブレイク。翌年の『教師びんびん物語』は毎回、視聴率が20%を超えアイドル俳優として人気を集めた。

「テレビドラマのいい時代を過ごすことができたと思います。当時は人気を実感することはあまりなくて、連ドラの掛け持ちは当たり前で忙しかったので、あっという間だった気がします」

20歳の野村を特写/本誌写真班
20歳の野村を特写/本誌写真班
すべての写真を見る

 作品に恵まれ、多くのCMにも出演した20代は順風満帆に見えていたが、ジレンマを抱えていた。

榎本のイメージが強くて、別の作品に出演しても、求められるのは同じようなキャラクターだったり、悪役をやりたくても、CMに出ているとできなかったりすることがあって窮屈だったし、ストレスでした

 そうした思いを抱えながら30代で舞台を経験。レオナルド・ディカプリオ主演で映画化された作品で、男性の同性愛が描かれている初舞台をきっかけに、イメージチェンジを図ることができた。

「いままでできなかった役や作品を舞台でやることができ勉強になったし役の幅を広げることができました」

 舞台を経験するなかで、2時間ドラマなどで犯人役を演じることも増えていった。

 その一方で、ドラマ出演などの仕事が減っていき、苦しい時期を過ごした。

40代でちょうど厄年のころでした。干されたというのではなく、仕事がなかった。俳優は待つ仕事ですから、そういうことがあるんだと思います。対処? 耐えるしかない、待つしかないと思っていました

 2012年に所属事務所から独立、個人事務所を構えた。

プライベートで離婚を経験し、住宅ローンもゼロになって、すべてがゼロ、初心に戻ったような気がしたんです。そこからどうするかというときに新たなチャレンジとして、どこかに移籍するのではなく自分でやってみようと漠然と思いました

 独立直後、事態を好転させることが続いた。バラエティー番組での“びんびん”の田原との再会企画が話題に。その番組を見ていたプロデューサーの目にとまり、ドラマ『とんび』(’13年)の和尚役に起用され、丸刈りや好演が評判になった。

独立したときに全部がうまい具合に重なり、いま思えば決断は間違っていなかった

 浮き沈みや紆余曲折(うよきょくせつ)は“しくじり”談としてバラエティー番組で明かしている。