東京都監察医務院によれば2003年の23区内に住む65歳以上の単身世帯の孤独死は1441人。'16年では3175人と2倍以上に増加。需要が高まっていることから、特殊清掃業者は5年間で15倍になったとするデータも。ただし、かなりいいかげんな業者も多いと佐々木社長。

「素人がいきなりはじめました、というような経験の浅い業者がたくさんある。値段だけで選ぶと後で後悔する場合も多いと思いますよ」

 また、高額な料金を請求するケースや金目の遺品を盗んでしまう業者も。業界全体で「技術を向上させること」「モラルを徹底すること」がこれからの課題になっていく。

 家族が見つからない場合、清掃業者による清掃作業代、内装の修繕費など数十万円の費用はすべて大家の負担だ。

 被害はこれだけではない。孤独死があった部屋は、近隣住民が腐敗による異臭に気づき警察に通報して発覚するケースがほとんど。アパートの住人たちは住み続けるのを嫌がり退去してしまう場合も少なくない。

ホームレス救済で増える孤独死

 また自殺や腐乱死体が発見された物件は“事故物件”と呼ばれ、次に住む人には告知をする義務が生じる。当然、借り手がつきづらく、値引きなどをする必要も。

 今回の物件を所有するオーナーは、ため息まじりに話す。

「単純に家賃収入があればいいなと思いアパートを購入して人に貸していましたが、こんなことが起こるなんて……。今後の対応についても考えていかなければなりません」

 このような事故物件にホームレスをあてがうケースもある。新宿の不動産業者が話す。

「小泉政権のときにホームレスを積極的にアパートに住まわせるようになったんです。まずは住まわせてから生活保護の手続きをして、そこから家賃を払ってもらう形です」

 ホームレスが住むアパートには、事故物件があてがわれる場合が多いという。

「お酒を飲まれるホームレスも多く、近隣とトラブルになりがち。そして基本的に身寄りもないので、住んで数年で、孤独死してしまうケースも後を絶ちません」(同業者)

 ホームレスを救う政策が、結果的に孤独死を増やしているのは皮肉だ。

 厚労省が行った'16年の国民生活基礎調査によれば、ひとり暮らしの高齢者は約655万人で10年前の約410万人から約1・6倍に。

 孤独死を防ぐ手立てを考えなければいけない。


むらた・らむ ライター、イラストレーター、漫画家。汚部屋やホームレスなど、ディープな潜入取材が得意。著書に『ゴミ屋敷 奮闘記』(有峰書店新社)などがある。7月末には20年にわたる樹海取材のルポをまとめた『樹海考』(晶文社)を上梓する