中学校の数学の授業を何度か見たことがありますが、先生の苦労は並大抵ではありません。私が見たあるクラスには、自主的に数学検定を受けるくらい数学が得意な子がいて、すでに高校の数学を学んでいました。同じクラスに、分数の足し算ができないとか、そもそも掛け算や割り算もあやしいなどといった状態の子どもも複数いました。

 実に幅広い子どもたちが、同じクラスで同じ時間に同じ内容の授業を受けるのです。それが一斉授業というものです。長年小学校の教壇に立ってきた経験をもとに言わせてもらえば、小学校の先生たちは、ほとんどの場合、中の下くらいのレベルに合わせて授業をします。

 あまりレベルを上げすぎると、ついてこられない子が多くなります。かといって、レベルを下げすぎると、いつまでたっても次に進めず、1年で教科書の内容を終わることができなくなります。

 しかしながら、中の下くらいに合わせても、それより学力が低い子たちはついてこられません。ですから、その子たちには個別指導が必要になります。ところが、個別指導をしたいと思っても、授業中に他の子たちはほったらかしにして、個別指導することはできません。

 休み時間に個別指導すればいいと思う人もいるかもしれませんが、実際には不可能です。というのも、そういう子たちは休み時間が楽しみで生きがいということが多いからです。休み時間や給食時間に友達とおしゃべりできるのが楽しみで、そのために学校にきている子も多いのです。その楽しみまで奪って個別指導するのは難しいことです。

 それに、個別指導してそれでついてこられるようになるというならともかく、ほとんどの場合そんなに簡単な話ではありません。このようなわけで、教科書を厚くして教える内容を増やし、授業時間数を増やしても、大人数の一斉授業のままではその子たちはわからないまま座っている時間が増えるだけなのです。

日本は1学級あたりの人数が多すぎる

 では、どうすればいいのでしょうか? 

 いちばん効果があるのはやはり少人数学級の実現です。本気で教育改革をしようと思ったら、これを避けて通ることはできません。少人数学級の効果についてはすでにいろいろな研究がなされていますが、特に有名なのが、コロラド大学のグラス教授とスミス教授の研究で明らかになったグラス・スミス曲線です。

 これは50年間にわたって約300校を調査し、学級規模と学力の関係を統計学的に分析し、グラフ上に曲線として表したものです。