今回のサッカーW杯に出場した日本代表選手はベテランがそろっており主力はアラサー以上。“おっさんJAPAN”とも呼ばれたが、活躍は目を見張るものがあった。

「競技によって特色があり、サッカーは持久力がより必要です。フィギュアスケートは演技時間が短いものの、短時間で爆発的な力を発揮する神経系の分野の鍛錬が必要です。

 ジャンプも神経系による部分が大きいのですが、これらは、トレーニングである程度、補えます。ただ、フィギュアスケートでは柔軟性も必要になるため、身体の柔軟性を保ちやすい若い選手のほうが戦いには有利でしょう」

 今回、復帰を決意した理由について高橋は、公式ホームページに発表した当日に会見でこう語っている。

田中刑事選手の存在

「今まで僕は世界で戦うために現役をやっていたんですけど、(取材の際に、出場している選手が)全日本選手権という場で結果を残すために、自分自身を追い込んでいる姿に感動しました。そういう戦い方もありなんじゃないかと」

 昨年の全日本選手権に出場した中京大学の山本草太は、会場の喝采を浴びた選手のひとり。彼のスケーティングはまさに、自分を追い込んだもので、高橋の心を揺さぶった。

「山本選手はジュニアからシニアに移行する'16年シーズンに右足首を骨折。その後、2度の骨折と3度の手術を経て、昨シーズン2年ぶりに全日本出場を果たしました。そこまでの道のりは平坦ではなく、観客の感動を呼んだのです」(スポーツ紙記者)

左から、加藤綾子、高橋大輔、野村忠宏。キャスターとして現役選手の姿を見続けてきた
左から、加藤綾子、高橋大輔、野村忠宏。キャスターとして現役選手の姿を見続けてきた
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 高橋はキャスター業を通じて、多くの選手に触れ合った。その中のひとりが平昌五輪に出場した田中刑事だ。

「高橋さんと同郷の田中選手は、関西大学のリンクをホームにしています。ここは、高橋さんのホームリンクでもある。田中さんの練習する様子を見ながら、“自分ももう1度、頑張りたい”という気持ちを高めていったようです」(スケート連盟関係者)

 佐野さんもこう続ける。

「試合出場者を、ある種うらやむ気持ちもあったと思います。私もキャスターとしてスポーツ選手を取材する側も経験し、会場に行くと独特の緊張感を思い出したものでした。

 また、自分が取材をされる側だったことを思い出したのではないでしょうか。自分の出身スポーツで活躍する後輩たちの姿を見て、感じるものもあったことでしょう」

 佐野さんにも同様の経験が最近あったそうで、

「先日、私も22年ぶりにショーに出演しましたが、やっぱり気持ちよかったです。試合とショーという違いはありますが、リンクでひとり滑る感覚は何物にもかえがたいんです。

 また高橋さんは選手をやめてから大人の魅力を増しているでしょう。演技だけではなく、自分自身が追い詰められる緊張感を客観視して試合に出られる年齢になったのではないでしょうか」