泰葉は本当は母親に認めてほしがっている

 それでは、カヨコの「望みどおりの子」とはどんな子かと考えると、海老名家の家業からいって「噺家になる子」。今は噺家の世界も女性が増えているそうですが、圧倒的に男性のほうが多いことから考えると、カヨコにとって重要なのは息子であり、娘は二の次となります。

 泰葉はデビューシングル『フライディ・チャイナタウン』(1981年発売)でヒットを飛ばしますが、泰葉は、「母にこんな下品な歌と言われた」という意味のツイートをしていました(現在は削除)。一般的に考えれば、娘の作った歌がヒットしたら、親は大喜びするでしょうから、泰葉がショックを受けたことは想像に難くありません。しかし、上述したカヨコ発言から考えると、グレースがスポーツの選手でないからアカデミー賞を取っても認められなかったのと同じように、噺家になれない泰葉はどんなに結果を出そうと、カヨコのお気に召さないのだと思うのです。

 泰葉はカヨコへの恨みつらみを書く一方で、母親に許しを乞うために根岸の実家を訪れたり、母親を良妻賢母であるとほめるなど、精神的に完全に絶縁しているとは言えない状態です。泰葉はオフィシャルブログで、自らを超ファザコンと称していますが、本当は母親に認めてほしがっているマザコンなのではないでしょうか。

 還暦間近になっても、母親からの承認を求めてさすらう泰葉。大言壮語的な奇行も母親の気を引くためなのではないか。そう思うと、泰葉の奇行がなんとももの悲しく、「悪いヤバさ」だと見えてしかたないのです。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。他に、男性向け恋愛本『確実にモテる世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。