捨てきれない“甲子園”というブランド

 地域ごとの高校野球連盟も炎天下での応援の自粛を求め、選手にも試合中の給水時間を確保するなど対策を行ってきたが、甲子園では対策が間に合うのか不安視する声が多いのだ。前出の球場関係者が言う。

「甲子園の選手のベンチ内には、冷房設備があるんです。2014年から導入されたスポットクーラーも今年は増設しています。熱中症対策の理学療法士も球場に待機させ、選手たちの安全確保を最優先に考えています」

 と、ベンチ内の対策はできているようだが、応援席に関しては学校単位での対応策が求められる。また、一般席に関しては、自己責任で観てもらうしかないのが現状だ。

応援スタンドには、地方大会のようなテントも出せませんし、炎天下、陽に照らされた観戦席の表面温度が80度くらいになりますからね。うっかりしていると火傷するほど熱くなっています。一人ずつの体調管理まで球場が気を配るのは困難のため、熱中症に注意するアナウンスを増やすのが精一杯かもしれません」

 と、前出のスポーツ紙記者はいう。

 年々、真夏の甲子園の気温問題は厳しくなっている。マツコ・デラックスも提案するように、試合をすべてナイターにするとか、100回大会を機に、大阪ドーム球場での開催にしたらどうか、という役員の声も出始めているという。

 しかし、そこには簡単には決められない思いがある。

「高校球児が必死に目指してきた“甲子園”というブランドが障害となって、結論が出ない状態が数年続いているんです。炎天下で太陽の光を浴び、汗を流しながらボールを追う姿こそが、高校球児だという思いが捨てきれないんですね」(甲子園球場関係者)

 まさに焼け石に水の対策となっているのが実情のようだ。観戦する際は、十分な水分補給と、無理のない観戦で100回目の甲子園を楽しんでもらいたい。

<取材・文/宮崎浩>