本当のサバイバルウェディングとは

 ドングリ伊勢谷は正直、どうでもいい。むしろ、波瑠のプライドゼロの生きざまにイラっとするし、アラートが鳴る。完全なるパワハラであり、ブラック上司に対して、あらがうでもなく、盲従する波瑠に、何を見出だせばいいのか。

 もともと波瑠は、B級グルメが得意な週刊誌の編集者だ。それが突如、女性ファッション誌の編集部に入って、困惑するのはわからんでもない。

 でも「ずぼらでダサくて背脂こってりメシしか知らない体育会系」と「元彼氏の袖のとれかけたボタンを直してあげる甲斐甲斐しい女」がいっしょくたになっていて、どんな女なのかちっとも見えてこない。

 さらに、広告代理店のイケメン営業王子・吉沢亮の登場で、波瑠のキャラクターは混乱を極める。

 自意識過剰で意味不明な行動をとったり、勝手な妄想でドツボにハマったり、揚句の果てには一緒に帰るバスの中で、吉沢の肩を借りて寝こけたり。ドジっ娘に不思議ちゃん、腹黒女が完全同居。

 あ、多重人格という設定なのかしら? 結婚したいのか、したくないのか、がっつり仕事をしたいのか、したくないのか。芯がもう少しはっきり見えてこないと、共感は決して起こらない。

 変人の言いなりで結婚を目指すも、婚活パーティーはイヤだと拒否。本気で結婚したいと願う女性を、結果的に馬鹿にしているような気もする。文字通り、生き延びるためだけの結婚なら、合理的に進めろや、と思う。波瑠ほどのスペックならどうにでもなるじゃん。

 真剣に結婚のためにサバイバルする女性の話を、この前、友人から聞いたばかりなので、このドラマの設定がちゃんちゃら甘っちょろく感じる。すごいよ。ガチで狙いを定めている女性は、計画的かつ力ずくで相手の外堀からじわじわと埋めていくからね。

 人のよさそうな温厚な人間をダシに使ったり、周囲の人間を巻き込んでまで、自分の幸せを勝ち取ろうとするからね。リアルサバイバルウェディング。そっちのほうがよっぽどドラマチックで、見守りたいと思っちゃう。


吉田潮(よしだ・うしお)◎コラムニスト 1972年生まれ、千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。テレビ『新・フジテレビ批評』(フジテレビ)のコメンテーターも務める。また、雑誌や新聞など連載を担当し、著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『TV大人の視聴』(講談社)ほか多数。新刊『産まないことは「逃げ」ですか?』に登場する姉は、イラストレーターの地獄カレー。公式サイト『吉田潮.com』http://yoshida-ushio.com/