これまでジャニーズ事務所は、強気の営業で各局のさまざまな時間帯とジャンルの番組にタレントを送り込んできましたし、私自身テレビや雑誌の現場でその様子を見聞きしてきました。

 言わば、BtoB(企業間取引)の強さをBtoC(企業対消費者間取引)につなげてきましたが、この強気の営業スタイルがうまくいかなくなりはじめているのです。

 SMAPの解散騒動以来、ジャニーズのタレントを応援しているファンの人々ですら、ネット上に事務所への不信感をこぼすようになりました。

 さらに、稲垣さん、草なぎさん、香取さんが地上波の番組にほとんど出られない中で、TOKIOとNEWSの不祥事が起きたことで、世間の目はますます厳しいものになっています。

BtoBに強い反面、BtoCにカゲリ

 騒動が続いたことで、「BtoBはまだ変わっていないけど、BtoCがうまくいかない」という危機がジワジワと進行……。ファン離れ、新たなファンが生まれない、ファン以外からの猛反発など、C(消費者)にネガティブな意識と行動が見られるのです。

 だからこそフジテレビは、他局とは異なる「ジャニーズ事務所に忖度しない」「視聴者ファースト」のスタンスを世間の人々に見せるチャンス。その世間の中には、テレビ局にとって極めて重要なスポンサーが含まれているのは言うまでもありません。

 テレビ業界や芸能界は多くの人とお金が動くこともあって、根回しや調整が重視される世界。「自社の経営判断が絶対」というより、「スポンサーや業界内、世間の声を踏まえて意思決定していく」ことが多く、物事が動くペースが遅いところがあります。

「ジャニーズ事務所への忖度で3人にオファーしない」のも、チキンレースのような状態が続いているからと言えるでしょう。

 しかし、独立からまもなく1年というタイミング、フジテレビの連ドラ復活の兆し、ジャニーズ事務所との結び付きが強い日本テレビへの批判……あらゆる意味で、フジテレビにとって今がチャンスではないでしょうか。

 今やらなければ、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京に先んじられる可能性もあるでしょう。忖度に風穴を開けるのは、どのテレビ局なのか? フジテレビは業界にも大きな影響を及ぼすであろう英断を迫られているのです。