元担任は今春、教育現場から離れた。

「リンちゃんのクラスメートが卒業するまでは新たな児童は受け持たず、あの子たちの“担任”として事件と向き合い続けたい」との思いからだ。

 元保護者会会長の渋谷被告は法廷で一貫して無罪を主張した。そればかりか、裁判に参加したリンちゃんの両親に向けてひどい言葉を口にした。

「あれだけ証拠がそろっているのに、罪を認めませんでした。ほかにどんな証拠があれば被告を死刑にできるんでしょうか」

在りし日のリンちゃん
在りし日のリンちゃん
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 事件前は死刑制度について道徳的な観点から否定的な考えだったというが、当事者になったことで変わったという。

「リンちゃんはあの朝、いつもどおりに登校しただけなのになぜ被害にあったのでしょう。裁判で事件のことを聞くのは正直つらかったですが、真実は知りたかった」

 渋谷被告は判決を不服とし、即日控訴。リンちゃんの家族も同18日、控訴した。

 リンちゃんの父親ハオさん(35)に改めて話を聞くと、

「リンちゃんのお墓の前で“被告の死刑判決は出せませんでした”と報告しました。納得ができません」

 渋谷被告の死刑を求める署名を再開し、日本語、英語、ベトナム語のほか署名フォームを104か国語に翻訳、世界中から署名を募っている。

 同級生は5年生の夏休みを迎えた。リンちゃんの机は今、校長室にあるが、そこを訪れる児童の数は減っており、事件の風化を危惧する声も。

「リンちゃんが私の中からいなくなることはありません。私は、ずっと彼女の担任です」と、元担任はきっぱりと言い切った。