逆に、人間がカラスを食べる文化がかつて中国や韓国、日本の田舎などにありました。滋養強壮ですね。フランス料理ではジビエとして健在です。

 僕も食わされましたよ、カラス肉料理のレシピを作ったバカな教え子がいてね(笑)。多少クセはあるけど食えます。まあジャーキーがいちばんいいかな。

鳥類では例外的に共食いをする

──実は個人的にずっと疑問だったのが、街中にあれだけカラスがいるのに、死骸は一度も見たことがない、ってことでした。

 基本的に野生の鳥は弱ると、外敵から身を隠すため、こんもりした森林などへ逃れます。そこで力尽きて、ポロッと枝から落ちて死んでいくケースが多い。

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 ほかにも、死んだカラスの死骸を仲間が食べてしまうことがあります。鳥類では例外的にカラスは共食いをする。

 数羽のカラスを同じおりに入れておいたとき、ケンカが始まって1羽が負けて死んでしまうことがあった。その後どうするか見ていたら、勝ったカラスと周りにいたカラスで、死んだカラスを残さず食べてしまいました。

──先日公園で目撃したのですが、池を挟んで向こう側のカラスがこちら側にいたネコを目がけて、スレスレに滑空してきたんです。それも何度も。

 ネコをもて遊んでいたというか、ちょっかい出して面白がってたんでしょうね。人間と同様、彼らにもそういう部分があるんです。

 カラスは遊びをする数少ない動物の一種。まあその公園のネコの場合、弱っていたり子ネコだったりしたら、つついて食べちゃってたかもしれません。

──ゴミ集積所の散乱や糞害、騒音、農作物への食害など、人間にとっては厄介な鳥ですが。

 人間とカラスはすでに共生していると認識したほうがいい。ゴミ問題に関しては、問題を作っているのは人間のほう。

 カラスは頭はいいけどクリエーティブではないから、生きるための選択をするしかないわけで。そこは人間サマが知恵を出して、どう共生していくかを考えないといけませんね。


杉田昭栄(すぎた しょうえい)/1952年生まれ。宇都宮大学農学部卒業、千葉大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士、農学博士。専門は動物形態学、神経解剖学。一般社団法人 鳥獣管理技術協会代表理事。著書はほかに『カラス なぜ遊ぶ』『カラスとかしこく付き合う法』など(撮影:吉濱篤志)

中村 陽子(なかむら ようこ)東洋経済 記者『週刊東洋経済』編集部記者