これまで実態が明らかにならなかったのは、圧倒的な権力を持つ塚原夫妻への“忖度”があったからだ。

朝日生命では、試合に出場できるかどうか瀬戸際の選手の親は、塚原夫妻に付け届けするのが常識だったようです。いいものを渡せば優遇されることを知っていますから。

 お中元を贈ったら気に入らなかったのか送り返されてきたので、現金を渡した親もいた。品物は送り返してきたが、現金は受け取ったそうです。以前にお金持ちの親がコーチたちに現金を配ったことがあり、それから定着してしまった習慣らしいですね」(体操クラブ関係者)

 権力の集中が続いたことで、組織自体にも歪みが生じている。体操女子ナショナルコーチの中には、朝日生命所属のコーチや塚原本部長と親しい指導者が在籍している。

「ナショナルチームのコーチは、日本の体操を強くするための活動をしなければなりません。さまざまな選手を指導して、日本チーム全体を強化するのが仕事ですから。

 でも、朝日生命のコーチはナショナルコーチとしてJOC(日本オリンピック委員会)から給料をもらっていながら、NTCでも朝日生命の選手しか熱心に指導していないのは、誰でも知っていますよ。これって、JOCのお金で自分のクラブの選手を強くしているということになりますよね」(前出・体操関係者)

 宮川選手が当初申し込みを見送っていた“2020特別強化選手”に関しても、不可解な事態が発生している。内村航平選手や白井健三選手など体操男子のナショナル選手がNTCの使用を申請して断られたというのだ。“2020”の女子選手数人が合宿をしていることが理由だという。

NTCはトップレベルの競技者用のトレーニング施設です。それなのに、内村や白井のような選手が使用を断られるなんてありえません。とても大きな施設なので、男女合同でも十分に練習できるんですよ。“2020”が異常に優遇されているのは、バックに千恵子氏の存在があるからでしょう」(前出・体操関係者)

 体操選手にとっては、とりあえず“2020”に参加したほうが良好な練習環境を得られそうだ。それでもなぜ拒否するのだろうか。